研究課題/領域番号 |
16K04277
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研究機関 | 帝塚山大学 |
研究代表者 |
谷口 淳一 帝塚山大学, 心理学部, 教授 (60388650)
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研究分担者 |
相馬 敏彦 広島大学, 社会科学研究科, 准教授 (60412467)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自己確証 / 自己高揚 / 本来感 / 自己呈示 / 関係的自己 / 信念 / 親密な関係 |
研究実績の概要 |
自己評価の低い者は自己高揚目標と自己確証目標が同時に生起した場合、呈示すべき自己概念に大きなズレが生じやすい。このため、制御資源を枯渇させやすく、結果として効果的な自己呈示に失敗し、他者との新たな関係形成が難しくなる。このようなズレは社会的文脈や信念の影響を受けて生じる。だが、彼らでも既存の親密な関係の中で培われた関係的自己が活性化すると、上記のズレが生じにくくなり新たな対人関係の形成が可能になり得る。親密な関係の醸成は、排他的に対人ネットワークを縮小させる可能性がこれまで指摘されているが、親密な関係に付随する関係的自己の効果に着目するならば、特に自己評価の低い者では逆に親密な関係の醸成がネットワークの拡大に寄与する可能性があるといえ、本研究ではこの点を実証的に明らかにすることが目的である。 平成28年度は予備的研究として、後続の実験で使用する「ありのまま信念尺度」の開発を行った。具体的には本来感尺度(伊藤・小玉, 2005)や過剰適応尺度(石津, 2006)の項目を参考にして、16項目の仮項目を作成した。大学生254名を対象として質問紙調査を実施し、項目分析を行い、14項目を「ありのまま信念尺度」として確定した。本尺度は充分な信頼性を有しており(α=.76)、予測通り、本来感尺度(r=.45)、個人志向性(r=.32)、セルフ・コンパッション(r=.21)と有意な正の関連を示しており妥当性を有していることも確認された。また、イラーショナル・ビリーフとは有意な関連が示されず、作成された尺度が偏った信念を測定しているものでないことも確認された。また、本尺度を用いた実験を行うための準備を進めた。具体的には当該研究課題と関連する研究として、前年度までに実施していた関係的自己に関わる研究について2つの学会で発表し、他の研究者との議論を通じて概念整理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全体的に当初の予定より遅れている。当初は平成28年度中に「低自己評価者の自己呈示では制御資源がより消費されること、その傾向は、ポジティブな自己呈示に強く動機づけられる場合、また、ありのまま信念が強い場合に特に顕著になること」を示す研究1の実験を実施する計画であったが、実験に先立ち、関係的自己の概念について整理する必要が生じたからである。そのため、平成28年度中は実験の実施をあえて急がず、仮説モデルの見直しを行った。ただ、実験の道具となる「ありのまま信念尺度」も完成し、全体としては当初の研究計画を履行できる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度については、平成28年度に実施予定だった研究1の実験を実施する。その結果をふまえ、「未知の他者との接触時になされる低自己評価者の統制的自己呈示には制御資源が必要であること、研究1と同様に自己呈示に強く動機づけられている場合、また、ありのまま強迫信念が強い場合にその傾向は特に顕著になること」を示す研究2の実験実施準備を行う。また、並行して、「新たな対人関係の形成場面において、関係的自己がポジティブであれば、自己評価が低くても、初期適応が果たされること」を示す研究3を大学新入生を対象として実施する。いずれも既に実験参加者、調査参加者の確保の目途も立っており、研究の準備は整っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの達成度の理由で述べた通り、平成28年度に実施予定としていた研究のいくつかを平成29年度に行うこととしたため、平成28年度に研究の実施に伴う研究費が必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は前年度実施予定であった研究を実施するため、その研究の遂行に研究費が必要となる。また当初の予定通り国内外の学会での発表や投稿論文に関わる研究費が必要となる。
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