研究課題/領域番号 |
16K04277
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研究機関 | 帝塚山大学 |
研究代表者 |
谷口 淳一 帝塚山大学, 心理学部, 教授 (60388650)
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研究分担者 |
相馬 敏彦 広島大学, 社会科学研究科, 准教授 (60412467)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大学適応感 / 初期適応 / 本来感 / 自己呈示 / 関係的自己 / 親密な関係 / シャイネス |
研究実績の概要 |
親密な関係の醸成は、排他的に対人ネットワークを縮小させる可能性がこれまで指摘されているが、親密な関係に付随する関係的自己の効果に着目するならば、特に自己評価の低い者では逆に親密な関係の醸成がネットワークの拡大に寄与する可能性があるといえ、本研究ではこの点を実証的に明らかにすることが目的である。 令和元年度は、平成30年度に実施した「低自己評価者の初対面他者への自己呈示では制御資源が消費されること」を検証する研究1の実験についてデータ整理と分析を進め、研究会や日本社会心理学会で発表を行った。女性のみに「低自己評価者の自己呈示では制御資源がより消費されること、その傾向は、ポジティブな自己呈示に強く動機付けられる場合、また、ありのまま信念が強い場合に特に顕著になる」との仮説を支持する結果が得られたことに関して、他の研究者との議論の中でいくつかの示唆を得ることができ、実験操作などの改良を進めた。また、大学新入生への大学への初期適応を検討した研究3について分析を進め、大学入学前の友人関係に付随する関係的自己がポジティブであれば、大学入学後の友人に対してポジティブな自己呈示を行うことがき、また同時に真正な自己呈示を行うこともでき、これらが対人関係の適応を高めることが示された。この結果については2020年7月に実施するICP2020で発表するべくエントリーしたものの中止となったため別の学会で発表を行う予定である。 令和元年度は当初の研究最終年度であったため、これまでの研究のまとめを、所属する大学と他大学との合同研究会で発表し、低自己評価者やシャイネスが高い人の新規の人間関係構築のための効果的な戦略を提案し、現状残されている課題についても報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
全体的に当初の予定より遅れており、研究期間を1年延長することとした。これまでの研究1と研究3の実施のなかで、仮説が女性のみでしか支持されなかったこと、また未知の他者と会話する際に自己呈示を行うことがポジティブな効果を有することが示されたことを受けて「効果的な自己呈示を行うには十分な制御資源が必要であること」を検証する研究2や「重要他者の表象を活性化することで、低自己評価者の自己呈示において制御資源が保存されること」を検証する研究5について見直しの必要が生じたが、計画の修正に想定以上の時間がかかってしまった。令和元年度は研究発表を複数行い、他の研究者と議論することで新たな知見を得ることに努め、研究2については当初の研究期間を1年延長することで令和2年度の早い段階に実施することとした。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度については、研究2を当初の予定よりも簡略化した手続きで進め、「未知の他者との接触時になされる低自己評価者の統制的自己呈示には制御資源が必要であること」を確認した上で、当初の研究5と「重要他者の表象を活性化することで効果的な自己呈示を行えること」を検証する研究6、「重要他者の表象を活性化することで長期的に良好な対人関係を形成できること」を検証する研究7を整理統合し、「重要他者の表象を活性化することで低自己評価者の自己呈示において制御資源の消費が抑制され、効果的な自己呈示が行えること」を示すことを計画していた。ただし、新型コロナウィルス蔓延による緊急事態宣言の影響で実験が実施できるかは不透明である。そのため、実験実施が可能になった場合に向けた準備も進めつつ、当初の目的を達成するためにオンライン実験などの実施を含め研究方法の見直しを行った上で実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの達成度の理由で述べた通り、令和元年度に実施予定としていた研究のいくつかを令和2年度に行うこととしたため、それに伴う研究費が必要となった。 本年度は前年度実施予定であった研究についても実施するため、その研究の遂行に研究費が必要となる。また当初の予定通り国内外の学会での発表や投稿論文に関わる研究費が必要となる。
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