研究実績の概要 |
平成29年度は、児童を対象とする実験のための基礎データを得るために、大学生を対象として学習に及ぼす正答フィードバック(FB)の呈示の仕方(実験1:直後FB vs. 遅延FB)、および、正答フィードバックの学習に関わる注意要因(実験2:自動的/制御的)を検討した。 実験1では漢字の読み誤りの修正に及ぼす矯正FBの効果をその呈示タイミングを変数として検討した。通常、直後FBよりも遅延FBの方が矯正FBの学習が促進されるが、実験の結果、自己生成した誤答の想起が遅延FBの直後FBに対するアドヴァンテージに寄与する可能性が示唆された。つまり、遅延FBのアドヴァンテージは被験者が自己エラーを短期記憶に想起することによって起こることが示唆され、これは我々の当初の仮説に沿った結果である。この成果は、国際誌に公表済みである(Iwaki, Nara, & Tanaka, 2017)。 また、漢字の読み誤り時の矯正FBの学習に自動的注意が寄与することが明らかにされているが(e.g., Butterfield & Metcalfe, 2006)、実験2として制御的注意の効果の有無について電気生理学的に(脳波を用いて)検討した。その結果、自動的注意だけではなく、制御的注意も矯正FBの学習に寄与することが明らかとなった。この成果は、現在、国際誌にて審査中である(Iwaki & Tanaka, submitted)。 平成30年度の計画としては、自己生成エラーの記憶の想起が矯正FBの学習に与える影響をさらに学生を対象として追及し、効果的な手続きを特定したい。その上で、その成果を児童への実験に応用する予定である。
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