研究実績の概要 |
平成28年度の実験(Iwaki, Nara, & Tanaka, 2017)では、日本語の語彙学習課題を用い、矯正フィードバックを与える直前にエラーの記憶を想起させるかどうかを独立変数として操作した。また、反応に対する矯正フィードバックを与えるタイミングを反応直後か1週間後に設定した。エラー反応を呈示しない場合(no error-cueing条件)、直後フィードバック条件ではエラーの記憶が短期記憶に保持されているが、遅延フィードバック条件ではエラーの記憶の忘却が進んでいるはずである。しかし、エラー反応を視覚的に呈示すれば(error-cueing条件)、エラーの記憶が想起される。もし順行干渉が生じるならば、矯正フィードバックの学習がno error-cueing条件と比較して棄損されるはずである。しかし、この予想は支持されなかった。この結果は、エラーの記憶とその想起が矯正フィードバックの学習に対して少なくとも妨害的ではない可能性を示唆していた。 平成30年度の実験では、類似の手続きを用いて、エラー反応の記憶の想起が学習にもたらす影響を詳細に調べた。その結果、(1)エラーを想起させると、低確信度エラー試行において学習促進効果があり、(2)中確信度以上ではそのような促進効果がなく、(3)最終の再テスト時にエラー反応の記憶を検索できた試行でのみ学習促進効果が認められるという結果であった。この複雑な結果の総合的な解釈はまだ確立できていないが、エラー反応情報の活用の教育現場への応用のための貴重な知見が得られた。
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