研究課題/領域番号 |
16K04303
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
富田 英司 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (90404011)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コミュニケーション能力 / テキストマイニング / 協働省察 / ふりかえり / 大学教育 |
研究実績の概要 |
平成30年度は,本プロジェクトの3年目に当たるため,当初の予定通り,大学生のふりかえりのテキストデータを対象にテキストマイニングを進めた。今回,その分析対象となったデータは,本研究の代表者らが大学周辺地域において進めている,学生主体の放課後学習支援活動の中で生じるふりかえり,そして国際交流プログラムに参加した学生が回答したふりかえりである。特に,今年度は,MSC(Most Significant Change)法を援用し,海外渡航プログラム参加中に得た最も大きな変化をもたらした出来事に関するストーリーを研究対象に加えた。現在もテキストデータは解析を進めている段階であるが,これまでのデータ探索によって,他者とのコミュニケーションを通した学びでは,主体的な行為と同様に,主体的な行為に伴って生じる受動的な体験過程を学習者本人が十分に意識化することが,その後の学びの深さを予測する指標になりうるのではないかとの着想を得ている。主体的な行為は学びによって重要であるが,特定の結果をねらっておこなわれた行為がその結果をねらい通りもたらすことは,学習者本人を大きく揺さぶるような深い学びには結びつきにくい。むしろ,主体的な行為として取り組んだ行為が,結果的に,本人が予想し得なかった帰結を導き出し,その状況に比較的長期間取り組むことを通して,学習者はコミュニケーション能力を含む様々な能力を身につけることになるのではないかと考えられる。この仮説の妥当性を検討するためには,学習者のふりかえりから「能動性」を示す文法的指標と「受動性」を示す文法的指標を一定程度の精度で検出する技術が必要である。今年度は,その検出のための文法的特徴について一定程度明らかにすることができた。今後は,学習者の学びの深さ等の外的基準とふりかえりのテキストに示された文法的指標との関係について検討することが求められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,これまでの年度でも進めていたふりかえりデータの収集に加えて,当初の計画書において予定していた通り,大学生のふりかえりのテキストデータを対象にテキストマイニングを進めることができた。現在のところ,科学的な検討を経た結果が得られているほどではないが,これまでのデータ探索を通して本プロジェクトの目的達成に必要な分析の観点を得ることができている。そのような現状から考えて,研究完成年度である2019年度内には,一定程度の結果が提案できるところまで,研究を進めることができていると私は判断している。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度の取り組みにおいて検討を進めてきた,深い学びの指標となる文法的特徴を検出するための手法を,2019年度内に確立することが求められる。その上で,学習者の学びの深さを一定程度示す外的基準と,ふりかえりのテキストに示された文法的指標との関係について探索的に検討を進めることが次の課題である。
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