研究課題/領域番号 |
16K04535
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
安藤 聡彦 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40202791)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 環境教育 / 公害教育 / 社会教育 / 水俣病 / チェルノブイリ原発事故 / カナダ水俣病 / 公害 / 環境教育研究 |
研究実績の概要 |
本研究は、人の健康・社会・環境への影響が長期にわたって及ぼされる大規模環境を経験した地域における教育の現状と課題を理解する研究枠組を、水俣病事件、チェルノブイリ原発事故、カナダ水俣病事件、の3つの事例を素材としつつ、仮説的に構築することをめざしている。初年度にあたる2016年度は水俣に2度、ベラルーシ及びウクライナに1度訪問を行い、インタビューを含む資料収集を行った。両方の訪問調査において、とりわけ資料館や記念館等の博物館的施設の果たす役割の大きさがあらためてクローズアップされ、それらの成立史、展示内容と方法、学芸員等のスタッフ、学校との連携等に関する研究の必要性が痛感された。学校教育については、水俣市において指導資料の作成がどのようになされてきたのかについて集中的なヒアリングを行った。同様の調査を他事例についても行うことが必要であると解される。2016年度末には、チェルノブイリ原発の至近距離にあるベラルーシ共和国ホイニキ市ストレリチェヴォ中等学校から2名の生徒を招き、文京区、福島市、南相馬市、いわき市の4箇所で研究討論集会を行った。2名はともに同校の「エーデルワイス」という名の放射線防護・環境学習を軸とするサークルのメンバーである。2名の報告及び日本側高校生・大学生との討論から、このサークルが子どもたちの放射線防護に関する知識のみならず地元の環境や社会に対する豊かな知識と感覚の形成の機会となっていることが了解された。ホイニキ市 については16年度調査を含め3回の訪問調査を行ってきたが、今回の討論集会を経て、あらためてより集中的な調査によって本研究テーマに関する諸事実を明らかにすることが必要であることが認識された。ぜひ次年度の課題としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、16年度末にカナダの訪問調査を実施することにしていた。ひとつには研究実施者自身の体調の不十分さのために、いまひとつには16年度がチェルノブイリ原発事故後30年にあたる年であったために、カナダ訪問を延期し、先述の研究討論集会を実施した。集会は実り多いもので、今後の研究展開のうえでも大いに示唆を得ることができた。この夏は環境教育研究に関する大きな会議がカナダで開催されることになっておりカナダ調査にはよいタイミングなのだが、研究実施者の諸用務のために必ずしも実施が容易ではない。当初計画では2年間で調査を終え3年目に論文執筆という予定であったが、3年目にカナダ調査を延期することを前提に、2年目の作業を行っていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目にあたる17年度は、以下の諸作業を行っていく。①水俣市周辺自治体(熊本県芦北町、津奈木町、鹿児島県出水市等)、及び熊本県・鹿児島県、の水俣病に関する教育関連施策の調査を行う。②ベラルーシ共和国ホイニキ市の調査を行う。事故前後のホイニキ市の健康・社会・環境の変動について量的・質的データをあらためて収集する。とりわけストレリチェヴォ地区と中等学校の歴史を丹念に聴き取る。昨年度分とあわせ資料集としてとりまとめ、印刷製本を行う。③カナダ水俣病についての既存の研究のサーベイを引き続き行い、関連研究者や支援者との連絡をとる。④上記の①~③の作業を推進しつつ、研究仮説を構築し、学会発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の2017年3月末にベラルーシ共和国から研究者と高校生を招聘し、東京と福島県内3箇所とで討論集会を開催した。その経費の詳細まで事前に確定することができなかったため、最終的に25397円の残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越された25397円については、次年度に人件費の一部として組み込み適正に使用する所存である。
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