研究課題/領域番号 |
16K04535
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
安藤 聡彦 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40202791)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 環境教育 / 公害教育 / 社会教育 / 水俣病 / チェルノブイリ原発事故 / カナダ水俣病 / 公害 / 環境教育研究 |
研究実績の概要 |
本研究は、人の健康・社会・環境への影響が長期にわたって及ぼされる大規模環境破壊を経験した地域における教育の現状と課題を理解する研究枠組を、水俣病事件、チェルノブイリ原発事故、カナダ水俣病事件、の3つの事例を素材としつつ、仮説的に構築することをめざしている。 2年目にあたる2017年度は、11月にチェルノブイリ原発にほど近いベラルーシ共和国ホイニキ市を訪問し、中部の農村・ストレイチェヴォ地区にある中等学校の放射線クラブで活動する子どもたちの家族の聞き取りを行い、また同市の郷土民俗資料館学芸員の聞き取りを行った。これ以前に私はベラルーシを3回訪問しチェルノブイリ原発事故後の環境、社会、教育の調査を行い成果を発表してきたが、今回の調査によってこれまで未解明であった一般住民の事故前後の生活史(それは現地における教育の土台になるものである)の一端が明らかになるとともに、「記憶の継承」をはかる資料館についても資料収集や利用の現状と課題を明らかにすることができた。今回の調査にあたっては、日本の公害資料館関係者も参加したため、資料館において展示法の問題をはじめ、共通の課題について対話を行うことができたことも大きな成果である。 カナダについては、ひきつづきカナダ水俣病にかかわる日本語、英語の文献収集を行った。 さらに、日本環境教育学会の公害教育研究プロジェクト、ならびに公害資料館連携フォーラムの研究会において、調査で得られた知見の報告を行い、討論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回のベラルーシ訪問は短期間ではあったがポイントを絞り込んでの聞き取りを行い、貴重な成果を得ることができた。一方、時間の関係で水俣病関連の調査を十分実施できていないという課題がある。国内における公害教育研究をめぐる議論の活発化によって、研究ネットワークが拡大してきていることはとても悦ばしい。ベラルーシ関連の調査データの編集・発表作業については、文字おこしレベルまでは作業をすすめることができ、見直しと編集とが今後の課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、当初、水俣とチェルノブイリとカナダ(グラッシー・ナロウズ)の3箇所を比較する予定で計画をたてた。昨年度の実施報告書で書いたように、2017年度は勤務校で学会大会を開催することになり、その準備等でカナダ調査を延期することにした。ということで本来ならば2018年度に実施したいところであるが、勤務校における職場環境の変化等のために年度内にその調査を実施することは難しそうである。遺憾ではあるが、カナダ水俣病関係については、既存の文献資料(必要に応じて関係者とのコミュニケーション)にもとづいて議論をすすめていくことにしたい。 2017年度までの調査で得られたデータと文献資料、必要であれば国内補足調査をも行って、所期の目的である「人の健康・社会・環境への影響が長期にわたって及ぼされる大規模環境破壊を経験した地域における教育の現状と課題を理解する研究枠組」の構築に取り組みたい。まずは国内学会での発表を試み、その活字化をめざしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ベラルーシ調査データの編集・発行を企図していたが、作業が途中までしか進まず、印刷発行にまで至らなかった。次年度分は予算が大きくないので、印刷発行とせず、PDF化等、廉価な形での発信を追求する。翌年度にまわした分については補助調査費用とする。
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