研究課題/領域番号 |
16K04550
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
久井 英輔 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (10432585)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生活改善 / 社会教育 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究作業においては、研究計画に掲げた作業①(大正・昭和初期における生活改善運動とマスメディアの相互関係)を中心に行った。具体的な対象事例として取り上げたのは、博文館が大正期に刊行した総合雑誌、『生活』である。研究作業により具体的に明らかにしたのは以下の2点である。 第一に、同誌の「生活」関連記事は、新中間層が主な対象として想定されていたが、記事の内容が、新中間層の比較的上層部分を想定していたのに対し、家計記事の投稿などからは、新中間層の中・下層部分が読者層の中心であったと推察される。生活の簡易化、生活の科学化に関する当時のマスメディアによる情報発信のこのような特性は、新中間層上層部分の生活様式を前提とする生活モデルを実質上提示していた生活改善運動と同様の性格を有するものであった。 第二に、『生活』誌のスタンスは、当時において「生活」として観念されたあらゆる領域を対象とするものであったが、結果として同誌は、『主婦之友』に代表される、家庭生活の具体的な技術を中心に編集された、いわゆる「実用派」婦人雑誌との競争に敗れる。これは、当時において「生活」という概念が「家庭の領域」「女性の領域」「実用の領域」に関わるものとして次第に位置づけが確定されていき、その大局的な動向からは逸脱していた『生活』誌が、読者からの広範な支持を得られなかったことを示している。 以上のように今年度の研究では、大正期の雑誌メディアが生活改善運動と共有していた前提を明らかにするとともに、雑誌メディアがつくりだした「生活」への注目という動向の中で、雑誌メディア自体が淘汰されていく過程を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、生活改善とかかわる大正・昭和初期のマスメディアの事例として、上記の『生活』(博文館刊行)を集中的に扱った。研究計画段階では、より多くの事例を並立的に扱う形でこの時代の生活改善運動とマスメディアとの相互関係を扱う予定であった。しかし、これまで生活改善との関連で比較的取りあげられることの少なかった総合雑誌型のメディアの事例を集中に扱い、ある程度先行研究(申請者自身の研究含む)で分析が為されている新聞、婦人雑誌などとの位置関係を描く方が、明確かつオリジナリティのある研究成果を提示できると判断し、「研究実績の概要」に記した形での分析作業を行った。分析対象事例は計画段階から変更したが、当時の生活改善運動とマスメディアの関係を描くという目的自体は、十分に達成できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後(平成29・30年度)の研究期間においては、戦後初期および高度成長期の社会教育行政や公民館・婦人会の活動の中で取り組まれた生活改善運動、新生活運動が、同時代のマスメディアとどのような相互関係を有していたかを検討したい。特に平成29年度においては、戦後初期(1940年代後半~12950年代前半)の社会教育行政における生活改善・新生活運動の推進事業の実態を県単位で事例としてとりあげ、その動向がマスメディアの(例えば新聞社によるモデル事業とその広報活動)からどのような影響を受けていたかを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度において当初想定した人件費、謝金等が、諸般の都合で支払い不要となったため、当初より費用がかさむことが明らかとなった資料収集のための旅費に回した。しかし、年度内に可能な資料収集出張の費用が、所要額より結果として若干下回った。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は前年度に行わなかった分の資料整理等の作業のための人件費・謝金が必要となるので、上記の次年度使用額とあわせてそれに充当する予定である。
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