研究実績の概要 |
かな文字は、多くの子どもが就学前に習得することから容易だと考えられている。しかし、特殊表記(濁音文字(e.g., が)、拗音表記(e.g., きゃ)など) に限ってはそうではない。就学後もこれらの文字・表記に困難をもつ者は少なくなく、中には読み書き障害と診断されるケースもある。就学前教育において、こ うした問題を予防するための取り組み、および効果的な読み書き障害への介入方法が求められている。 本年度は、上記の研究を実施するに当たり、まず、先行論文の問題点の検証を行った。その成果は日本特殊教育学会第57回大会、日本発達心理学会第31回大会で発表した。その概要は、従来の仮名文字の読み習得研究が、音素文字を用いる欧米の研究に倣ったものになっていることを指摘し、今後は、音節文字である仮名文字の特徴に沿った研究を推進すべきであることを指摘したというものである。特に近年、欧米の研究に多く見られる音韻的要因だけでなく、形態知覚の要因に関する検討をより深く検討すべきであることを指摘した。 また、以上を踏まえて、音韻的要因、形態知覚の要因の相対的影響力を探る実証研究を行い、論文としてまとめ学会誌に投稿した(現在、審査中)。その概要は、過去に発表された論文、および筆者の過去のデータから、幼児の仮名文字の読み誤りパターンにおける音韻類似性要因、形態類似性要因の相対的な影響力を検討し、後者の影響力が顕著に大きいことを示したものである。
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