研究課題/領域番号 |
16K04647
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
佐々 祐之 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (30315387)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 代数的証明 / 探究的な学習活動 / 操作的証明 / 道具的創成 |
研究実績の概要 |
本年度は,前年度に行った操作的証明に関する情報収集の成果を基に,代数的証明の学習における学習指導法の基本的な枠組みを整理するとともに,中学生を対象とした実証的研究を行い,具体的な指導法の抽出,その効果の検証を行った. 本研究の目的である探究的な学習活動の促進のための操作的証明を用いた学習環境のデザインは,小学校高学年段階から中学校にかけての児童生徒を対象に構想するものであるが,平成29年度の研究において,その最終的な到達段階である中学校段階における代数的証明の学習指導法の検討と,その検証が実施できたことは,小学校中学校を一貫した学習環境のデザインを実現するにあたって,大きな成果であったといえる. 具体的には,まず,代数的証明の構成のプロセスモデルを,三輪(1996)による「文字式利用のモデル」を参考に構築した.証明する命題の前提を文字式を用いて「表す」,文字式で表した式を目的に応じて「変形する」,変形した文字式の計算結果を命題の結論に合わせて「読む」という3つの段階から構成される学習モデルは,代数的証明の学習において有効に機能するものであり,その前提として証明すべき命題を「探究的な活動を通して見出すこと」が,代数的証明の学習には重要や役割を担うことが明らかとなった. これらの研究成果のうち,理論的なモデル開発については,2017年6月に横浜国立大学で開催された日本数学教育学会の第5回春期研究大会の創成型課題研究の部で発表を行い,実践授業を通した検証については,2017年8月にサンポート高松で開催された日本科学教育学会第41回年会において研究発表を行い,関連する研究者と議論するとともに,有益な示唆を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は,道具的創成の様相の解明と,操作的証明の学習環境の開発であった.道具的創成の様相の解明のための実験授業については実施できなかったが,前年度の情報収集の成果を基に,理論の整理を行うことができた.また,学習環境の開発に関しては,中学校段階ではあるが,代数的証明に関する具体的な学習環境のデザインを行い,指導法の抽出を行うとともに,実証的研究を通した効果の検証を行うことができた. 以上のような成果から,本研究はおおむね順調に進展していると考えることができる.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,学習環境のデザインとその検証を行うことができたが,対象が,代数的証明の学習の最終段階である中学生を対象としたものであったため,代数的証明の学習の導入段階である小学校高学年の児童を対象とした学習環境のデザインを行い,授業実践を通した効果の検証等を行っていきたい.その際,可能な限り道具的創成の概念を活かした探究活動を盛り込むことを通して,代数的証明の学習における操作的証明の有効性を具体化していきたいと考えている. さらに,学習環境のデザインに関しては,以前,道具的創成の概念を用いた学習環境のデザインに関して共同研究を行ったエクセター大学の藤田太郎氏と連携し,海外における援用可能性も考慮に入れた研究を推進していきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は,約10万円の次年度使用額が生じた.当初,実物投影機等の教育機器を導入して授業実践を実施する予定であったが,実際にデザインした授業実践が中学校段階における授業であったため,これらの機器を必要としなかったことが,次年度使用額が生じた主な理由である.平成30年度においては,小学校段階での実証授業を予定しているため,改めて実物投影機等の教育機器を導入し,授業デザインとその検証を行っていきたいと考えている.
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