本年度は,3年間の研究計画の最終年度ということで,平成28年度および平成29年度に実施した研究を振り返るとともに,探究的な学習活動を促進する操作的証明の学習環境のデザインを,いかに実際の授業場面や教員養成・教員研修の場面に活用していくかということについて考察を行った. 特に,本年度は7月にイギリスのエクセター大学を訪問し,操作的証明や道具的創成に関する研究を行っている研究者と意見交換を行うことを通して,これまでの研究を具体化することができ,操作的証明を探究的学習活動の契機とする学習環境のデザインを実質化することができた. デザインした学習環境は,教員免許状更新講習等の教員研修の機会に,体験的な学習活動として活用することによって,その効果の検証を行い,学習環境デザインの修正と改善を行うことができた.教員研修では,おはじきと位取り表による操作的証明を理解した受講者らが,その操作的証明を活用して新たな数学的パターンを発見したり,発見した数学的命題の証明を行ったりすることが観察され,操作的証明を用いた学習環境が,学習者の探究的活動を促進するとともに,道具的創成がそれらの探究的活動を一層活性化するということを確認することができた. さらに,学習環境のデザインという視点を,教員養成においてどのように活用していくかということに関しても考察を進め,教員養成カリキュラムの在り方としてデザイン科学の視点を取り入れたモデルを作成した.もの教員養成モデルに関しては,日本教育大学協会の研究集会において発表し,参加者からの意見を聴取することができた. 3年間の研究を通して,探究的な学習活動を促進する学習環境のデザインとその効果の検証を行うことができ,さらに,学習環境デザインの考え方を,教員養成・研修にどのように活用していくかという新たな課題を得ることができた.
|