研究課題/領域番号 |
16K05083
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
前野 俊昭 名城大学, 理工学部, 教授 (60291423)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 代数学 / 代数的組合せ論 / 半順序集合 |
研究実績の概要 |
以下の三項目に関するテーマについて研究を進めた. (1) A型旗多様体の量子K環とアフィン・グラスマン多様体のK環に対するPeterson同型の類似の下で,量子Grothendieck多項式とK-k-Schur多項式との対応を明示的に与えた.特に,Grassmann置換を添字に持つ場合に対して,Peterson同型による像の一致が明示的に示される.この結果はK理論的Peterson同型写像の具体的表示と,相対論的戸田方程式の解の考察に基づく.積公式の比較などは今後の課題として興味深い問題である. (2) 超平面配置に対して定まるSolomon-Terao代数と呼ばれる次数付可換代数を導入し,その環論的・組合せ的性質を研究した.特に,超平面配置の自由性とSolomon-Terao代数の完全交叉性に関する結果を得た.Solomon-Terao代数の具体的表示は一般には容易ではないが,幾つかの例において興味深い組合せ的性質が観察される.Solomon-Terao代数は組合せ的特徴を持つ可換代数として興味深いクラスを提供するものと期待される. (3) 情報セキュリティに関わる代数的問題の一つとして,最大値関数をはじめとする一連の「オークション関数」の有限体上の表示の問題を考察し,それらの最小次数多項式表示に関する結果を得た.こうした結果は完全準同型暗号の下での秘匿計算技術等への応用が期待されると共に,純代数的な問題としても余り扱われたことが無く,対称多項式論の観点からも興味深いものであると思われる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
K理論的Peterson同型の下での量子Grothendieck多項式とK-k-Schur多項式の対応は,本研究課題における大きな問題の一つとして位置付けられていたが,一定の解決を見ることができた. また,超平面配置の自由性とSolomon-Terao代数の完全交叉性の同値性は,この分野におけるSolomon-Terao代数の位置付けを明確にする結果であり,可換代数の研究対象としても Solomon-Terao代数の意義が示されたものと考えられる. このように,本研究課題の目的として設定された複数の方向性のそれぞれでまとまった結果が得られており,研究の進捗状況としてはかなり順調に進展しているものと考える.
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今後の研究の推進方策 |
「概要」欄にも記述した通り,量子Grothendieck多項式とK-k-Schur多項式との対応は,K理論的Peterson同型の具体的記述に基づいているため,その積公式の対応は明らかではない.両者の積公式の対応関係を明示的に記述することは興味深い問題の一つと考えられる. Solomon-Terao代数に関しては,理論的な基礎となる結果が得られた段階である.従って,今後は具体例の蓄積のほか,組合せ環論的な視点からの構造の研究が重要になると思われる.特に,そのLefschetz性については今後の大きな課題の一つである. Lefschetz性に関する問題としては,マトロイドに付随して定まるGorenstein環のLefschetz性の解明が依然として未解決である.これに関しては幾つかの具体例や,部分的な結果が出つつある状況である.
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね計画通りの使用状況であるが,航空券など価格変動のあるものに対しては事前の見通しを立てることは無理であり,その結果誤差が生じることは不可避である.今年度においても,可能な範囲内で合理的な執行計画に基づいて使用する.
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