研究課題/領域番号 |
16K05124
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
加須栄 篤 金沢大学, 数物科学系, 教授 (40152657)
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研究分担者 |
服部 多恵 石川工業高等専門学校, 一般教育科, 准教授 (40569365) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ネットワーク / 倉持境界 / ディリクレ形式 / 非線形ポテンシャル論 / ペロン法 |
研究実績の概要 |
モジュラー列空間の枠組みにおける非線形抵抗無限ネットワークのポテンシャルの展開として、エネルギー有限な関数の族から生成される無限ネットワーク(重み付きグラフ)のロイデン型あるいは倉持型の理想境界上のディリクレ境界値問題を取り上げる。非線形ネットワークでは、関数に作用するラプラス型の作用素が定まり、この作用素に関するポアソン方程式の解の研究が重要であるが、本研究では、理想境界上の与えられた関数を境界値とする解が存在するかどうか調べるディリクレ境界値問題を中心に考察を行った。主結果は、この問題に対して、ペロン法が適用できるというものである。すなわち理想境界上の任意の連続関数が可解であることを証明した。
一般にペロン法で得られた解が与えられた境界値をとるかどうかわからない。解の挙動に関する境界の正則性が問題となる。有限台を持つ関数の完備化のなすばバナッハ空間の元(関数)がすべて有界であるという条件の下では、理想境界のすべての点は正則であることを証明した。この条件は、グラフの点の容量が下から一様に抑えられていることと同値であり、したがってネットワークのスペクトルギャップが正であるという条件から保証されるものである。このような事実を明示したことが本研究の特徴の一つである。この条件が成り立たない場合にもペロン解の境界挙動について調べるために、境界の集合の容量を導入し、かつ、境界に収束する道の族に対する極値的長さという概念を導入した。この結果、境界点のほとんどいたるところの点でのペロン解の収束、ほとんどすべての道に沿うペロン解の収束などを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モジュラー列空間の枠組みにおける非線形抵抗無限ネットワークの特別なケースが、一つのモジュラーが与えられたネットワークである。この場合には、ラプラス型の作用素の解、より一般にポアソン型方程式の解の振る舞いについて、新しい知見を得た。これからより一般のモジュラー列空間の枠組みにおける非線形抵抗無限ネットワーク上の同様の方程式の解、とくに正値解の挙動についていくつか重要な問題が浮かび上がる。本年度の研究成果は、グラフ上の非線形ポテンシャル論の進展に道筋を与えたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
モジュラー列空間の枠組みにおける非線形抵抗無限ネットワークの特別なケースが、一つのモジュラーが与えられたネットワークである。最近対数関数項のついた冪関数型の一種類のモジュラーをもつネットワークが取り上げられ、ロイデン型コンパクト化と双曲負曲率空間の精密な擬等長類の分類に関する幾何研究に応用され、成果を上げている。この例のように幾何学的コンパクト化との比較を通して、幾何学への応用を試みることは重要である。ラプラス型の作用素の解、より一般にポアソン型方程式の解の挙動、YauーOmoriタイプの最大値原理、上記ロイデン理想コンパクト化の解の挙動振る舞いについて研究し、非線形ポテンシャル論の進展を図る。
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