研究課題/領域番号 |
16K05160
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小山 晃 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40116158)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 位相幾何学 / ANR理論 / ホモロジー論 / 局所単連結 / 次元 |
研究実績の概要 |
Coarse幾何学におけるANR理論を構築する試みを行っている。ANR理論は代数的トポロジーを展開する上でCW複体や位相多様体のように組み合わせ的構造や幾何的構造に依存しない内的特徴付けからよい結果が得られるので、coarse幾何学で同様な理論が展開できればよいと考えた。典型的なANRの特徴付けはそのホモトピー的な意味での局所連結性を用いて行われる。しかしcoarse幾何学では局所的なホモトピー理論を展開することは難しいので、組み合わせ的性質を利用したホモロジー論を用いた局所連結性に活路を見いだそうと考えた。そこで従来のsmallサイズの位相幾何学におけるものも含め先行研究に当たってみたが、必ずしも十分な結果が得られていなかった。また現在このテーマではVesko Valov教授(Nipissing University、Canada)が先行していることを見つけ、共同研究を開始した。現在は、局所的にホモロジー群が縮約するという性質からホモロジーレトラクトという概念を導入してホモロジーANRを定義した。これにより、従来のANRがもつホモロジー論的な性質がどの程度実現可能かを調べた。 また、従来のANRとはどのくらいの差異があるかを研究している。現在の状況はホモロジー的に局所単連結になる分解空間の特徴付けを解明することがキーポイントであることがわかってきた。この問題はGriffithsの古典的問題「ホモロジー的に局所単連結であるがホモトピー的に単連結な位相空間が存在するか」(1950年)を有限次元コンパクト距離空間の範囲で解決することに結びついている。この問題は無限次元では解かれているが、有限次元の場合は解決されていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一の理由として、研究状況の報告で「Coarse幾何学におけるANR理論の構築を目指した」と記したが、Valov氏との共同研究をまとめて以下の論文を発表できる運びとなったことをあげる。 On homologically locally connected spaces, Topology and its Applications,to appear. 次に、継続して分解空間の局所的ホモロジー連結性に関する共同研究も順調に進んでいることをあげる。
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今後の研究の推進方策 |
分解空間のホモロジー局所連結性を特徴付けることを目標に挙げる。この問題に関連して組み合わせ群論の無限版がキーポイントになるとの感触を得ているので、特に組み合わせ群論の研究を行う。同時に課題として浮上したGriffihsの問題を解決は、coarse幾何学にかかわらずトポロジーの問題として重要なので、中心課題の一つとして挙げる。これらの問題は申請課題の研究の過程で出てきたものであるが、これまでの研究で用いてきた手法とは大きく異なるので、他大学の研究者らへ協力を仰ぐことが多くなると予想される。主に研究会や他大学のセミナー等に積極に参加し、逆に私のセミナーへ招聘して講義を等をしてもらうことで打開を図っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
すべてを旅費、謝金で支出したため、残高が生じた。少額の残金を有効利用するために次年度へ移行した。
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