最終年度はSPring-8における3回のマシンタイムを使って超高圧発生実験を行い、新たな知見を得た。特に10月に行った3回目のマシンタイムでは、今までのBL-10XUに代わってBL-34XUを使用し、従来の数ミクロンより1桁細い100nm程度に絞ったX線ビームを用いた実験を行って測定の空間分解能を飛躍的に向上させ、それによって何が可能になるか、また測定時間等の問題は起きないか、といったことを調べた。その結果、ナノビームを使用することにより、2段目となるマイクロアンビルのキュレットサイズを10ミクロン程度にすれば、従来の1段式ダイヤモンドアンビルと遜色のない高品質のX線実験が可能で、測定時間としても1点10秒程度あれば充分な質の回折パターンが得られることが分かった。 本研究は2段式加圧という全く新しい実験方法を用いて、従来のダイヤモンドアンビルの上限となる400 GPaを越す超高圧力領域での実験を可能にする新しい高圧実験技術の開発を目指してきた。その結果500 GPa以上の高圧発生にまでは至らなかったものの、従来幸運な場合にのみ到達できた300GPaを越す圧力発生はほぼルーチンに可能な技術を確立し、さらにこのような実験技術に伴う新たな技術的問題点の洗い出しにも成功した。これらの成果は3編の原著論文と1編のレビュー論文としてまとめることができた。最終年度に行ったナノビームを使った実験がルーチン化すれば、今後500GPa超の実験も充分可能になるであろうという展望も得ることができた。
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