球体化防御姿勢は節足動物で幾度も採用された効果的な防御手段であるが,成立には不合理性がひそんでいる.この不合理性は,外骨格上の凹凸を適切に咬合するよう見越した体づくりが不可能な点にある.この難問を解消する生体生理メカニズムの解明を形態学的検討にもとづいて行ったところ,咬合する凹凸部位は脱皮時の硬化タイミングのずれによる軟/硬関係と対応しており,これらの部位には接触を感知する機械受容器が必ず位置していることを明らかにした.機械受容器と脱皮の進化的な獲得タイミングは,節足動物の成立はるか以前のタイミングとなることから,いわゆる忘れ形見的な生体的特徴を形態形成に組み込んだと著すことができる.
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