研究実績の概要 |
洞爺カルデラ(北海道)で約11万年前に起きた破局的大規模噴火のメカニズム等を理解するため,この噴火の噴出物(火砕流堆積物中の軽石など)の岩石学的分析等を行っている.平成29年度は,岩石試料の化学分析とその検討,含まれる斑晶鉱物の化学組成や組織の分析等を進めた. 全岩化学組成分析の結果によると,洞爺カルデラのマグマが,後カルデラ火山である有珠火山や中島火山,さらには近隣の火山である倶多楽火山 (Kt-2噴出物) や喜茂別火山 (Km-2噴出物) とも関連がある可能性が示された.巨大カルデラ噴火のマグマシステムの広がりや構造を考えるうえで重要であり,今後さらなる解析が必要と考えられる. また,斑晶鉱物の解析によると,斜長石・輝石斑晶の結晶成長履歴の読み取りから,噴火準備過程においてマグマシステムが多段階に進化してきた過程が見えつつある.斑晶については前年度までに,起源の異なるtype-A, B, Cという大きく3つのグループに分けられることがわかっていた.本年度の解析により,これらはtype-A, B, B', C1, C2, C3の6つのサブグループに分けられること,type-BからB'へ,type-C1からAへ,というように噴火前にマグマ条件の変遷を記録している結晶が存在すること,などがわかった.この変遷が噴火のトリガーにどのような影響を与えているのかなど,今後の検討が必要である. これらの結果については国際・国内学会で発表を行ったほか,前年度の成果については論文発表を行った.
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