研究実績の概要 |
洞爺カルデラ(北海道)で約11万年前に起きた破局的大規模噴火のメカニズム等を理解するため,噴出物(洞爺火砕流)の岩石学的分析等を行った.最終年度は,岩石および斑晶鉱物等の化学組成・組織の追加分析とともに,マグマ溜まりの温度・圧力推定,噴火年代の推定,論文執筆などを行なった.補助事業期間全体を通じて実施した研究の結果,洞爺カルデラ噴火および関連する活動に関して多くの成果が得られた.まず,洞爺火砕流堆積物の地質学的調査を行い,従来のユニット区分を見直すとともに,詳細な噴火推移を明らかにした (Goto et al., 2018).このユニット区分に基づき岩石学的な研究を進め,噴火に関与したマグマには3系列6グループが存在することを見出した (Tomiya et al., in prep).そして,これらは噴火直前~噴火中にごく短時間(おそらく数日以下)に混合し噴出に至ったことが,斑晶の累帯構造の解析から明らかになった.この噴火直前の混合以外にも,数百年といった中長期スケールで高温マグマの注入があったこともわかった.また,洞爺噴火をもたらしたマグマ溜まりの温度・圧力については,その主部分である高シリカ流紋岩マグマ(SiO2=77~78 wt.%) について,750~800℃・150~200MPa(深さ6~8kmに相当)と推定された.さらに,これまでよくわかっていなかった洞爺噴火の年代値について,層序・放射年代・酸素同位体曲線・花粉など様々な情報を組み合わせた結果,10.6万年前と精度良く推定できた (東宮・宮城, 2020).このほか,洞爺の後カルデラ火山である有珠火山に関する研究 (Goto and Tomiya, 2019; Goto et al., 2019) なども進めることができた.
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