本課題ではこれまでに有用性は認知されていながらも合成法が欠如していた[2.2]-パラシクロファン類の効率的不斉合成法の開発とそのキラル素子としての利用を目的に研究に取り組んだ。その結果、取り扱いの容易な不斉触媒であるキラルリン酸触媒を用いた速度論的光学分割を伴うアシル化反応が有効であることを見出し、パラシクロファン型ジオールを高い鏡像体過剰率で得ることに成功した。残念ながら、この骨格を持つ様々な誘導体の合成には至らなかったが、その途上で類似構造を持つ1,8-ジアリールナフタレンが有望な構造単位として機能しうるという興味深い知見を見出すとともに、新しいC-Nカップリング法を見出すことができた。
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