本研究の最終目的は、提案する熱アシスト磁気記録用ナノ光ヘッドを搭載した超高密度ハードディスク装置を実用化し、省エネルギー化や豊かな情報文化社会の実現に寄与することである。熱アシスト磁気記録はハードディスク装置の記録密度向上に不可欠な技術である。熱アシスト磁気記録には熱源となる近接場光を発生するナノ光ヘッドが必要であるが、光の利用効率が低いことが課題である。本研究の研究期間内の目的は、量子ドットを用いた新規な構成により光の利用効率を飛躍的に高めたナノ光ヘッドを実証することであり、そのために解析と実験の両面から研究を進めた。 解析に関しては、まず電磁界解析ソフトウェアおよびワークステーションを導入して研究環境を整備した。次に、新規な構成のナノ光ヘッドについて、その構成の最適化を目的として電磁界解析のシミュレーションを行った。検討したナノ光ヘッドの構成は、半導体基板上に量子ドットを含むリングレーザーを形成し、その横に金属のナノ光アンテナを設けるというものである。この構成について、リングレーザーの固有モード、ナノ光アンテナの長さ、リングレーザーとナノ光ヘッドの間隔等をパラメーターとしてナノ光ヘッド先端の近接場光の強度を計算し、高い近接場光の強度を得るための最適な構成に関する設計指針を得た。一方、実験に関しては、まず量子ドットを含むリングレーザーを製作してレーザー発振を確認した。次に、ナノ光アンテナを製作してリングレーザーからの光がナノ光アンテナ先端へ到達することを確認し、ナノ光ヘッドの基本機能を実証した。
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