ポーラスコンクリートを雨水の排水機能を持たせた法面被覆コンクリートとして利用する本研究の最終年度として,地盤模型のポーラスコンクリート被覆表面に植生を付加し,その成長の程度および成長に伴う排水量の変化について検討した結果,空隙率によりポーラスコンクリート内部への水の浸透が変化することにより植物の生育に影響がでる.特に,空隙率が小さいほど強度が大きくなることによって被覆コンクリートとしての性能は向上するが植物の成長が阻害される.また,背面地盤からの水の浸透は上部より下部に集中して排水されることから植物の成長が均一にならない.植物の成長に伴い排水量は低下する傾向がみられるが,一般的な地盤材料の透水性に比較すると十分な排水機能を有しており植生および排水性を確保した構造といえる. これまでの一連の研究の結果,雨水が地盤内を浸透し排水溝もしくは河川に流出する際,地盤内では浸透水による水道ができることから排水性能が徐々に向上することや微粒土砂の移動を確認することができた.従来行われてきた部分的に排水口を設置することによる背面土壌からの排水とポーラスコンクリートにより法面全面に排水機能を付加した被覆工法とした場合とを比較した場合,ポーラスコンクリートでは地盤内の排水が場所による制限を受けることなく自由な排水が可能であるのに対し,部分的な排水口では,地盤内の微粒土砂が排水口に向かって移動することによって微粒土砂の移動が制限されることからポーラスコンクリートに比較して排水性能が劣ることが明らかとなった. 透・排水機能を持ったポーラスコンクリートの利用拡大に向けて,新たに切土斜面における法面被覆コンクリートとして利用した場合の排水機能や植生について検討してきたが,実用化に向けて今後さらに耐久性の向上について検討を加える必要がある.
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