研究課題/領域番号 |
16K06632
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
田中 麻里 群馬大学, 教育学部, 教授 (10302449)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 住宅計画 / 防災教育 / 伝承 / タイ / ワークショップ / 住環境 |
研究実績の概要 |
タイにおいて洪水被災状況や水防の把握、洪水発生の原因の解明については多くの調査研究が実施されてきた。しかし、居住地レベルで実際に居住者がとった避難行動や浸水後の住宅復旧について具体的に検証した報告は、極めて少ない。しかし、被災地域にとって、次の災害に備えるためには洪水経験を語り伝えていくことが重要となる。 そこで本研究では、洪水被災したタイ住宅公団住宅地を対象として、災害時および復旧過程を検証し、洪水被災が居住環境に与えた影響を明らかにすることを目的としている。また、調査結果を踏まえ被災経験を語り伝える防災絵本を大学生と居住者で共同制作することを目指している。 本年度はチェ ンマイ市内の補足調査を行い、新たにチェンマイ市内の公団住宅地において洪水被災した居住者へのヒアリング調査を実施した。チェンマイ市内全体と公団住宅地の調査結果を分析することで、避難や対応、復旧についても住宅地の特性が明らかとなった。また、ヒアリング調査を行ったチェンマイの公団住宅地において、地元の子どもたちと大学生が洪水実態について理解を深め、共有し、地域の洪水経験を伝承する防災絵本の制作ワークショップを実施した。ワークショップには小学生を中心として、幼児から高校生まで14人が参加し、大学生・教員ら7人と一緒に活動を行った。ワークショップを通して、子どもたちは大学生と一緒に、被災経験だけでなく、洪水被害を軽減する昔からの取り組みや知恵、地域での行事の意味などについても知る機会となった。参加した子どもたちの約半数は、今回のワークショップで初めて地域の洪水被害や対応について知ったと回答している。さらに、住宅地の歴史を初めて知った、もっと地域のことを知りたいなどのコメントも得られ、洪水の経験を伝えるだけでなく、自分たちが住む地域への興味や関心を高めることについても一定の効果が検証できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年に引き続き、現地調査を実施することで、住宅地の特性や対応などを明確にすることができた。そうした結果及び実態について居住者へフィードバックすることができた。また、チェンマイにおける洪水経験を伝承する防災絵本の制作ワークショップを地元の子どもたちと大学生が中心になって実施することができた。絵本は日本語、英語、タイ語の3ヶ国語で記述し、どのような国や地域でも防災教育に役立てることができ、活用できるものとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
チェンマイ以外の地域の洪水が居住環境に及ぼした影響について調査を進める。制作した防災絵本を用いて、実際に日本やタイなどで絵本の読み語りを実施し、その結果について考察を行う。また読み語り以外の活用の方法についても検討を行う。研究成果については、日本のみならずタイでの発表も検討し、積極的に公表して課題を共有できるよう取り組む。
|
次年度使用額が生じた理由 |
海外旅費の燃料費などの差額であり、次年度の旅費などに充当する。
|