研究課題/領域番号 |
16K06882
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
坂本 祐二 東北大学, 工学研究科, 特任准教授 (50431523)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 超小型衛星 / キューブサット / 全方位カメラ / 姿勢決定 / 画像解析 |
研究実績の概要 |
本申請では、超小型衛星の1種であるナノサット(1~5kg)に搭載可能な、全方位カメラによる衛星姿勢決定ユニットを試作し、地上環境で評価する。試作ユニットは、民生用全方位カメラを参考とし、CMOSセンサとFPGAによる画像処理部を組み合わせた構成である。1つの撮像センサで、地球、太陽、月を撮像し、オンボード画像解析で昼・夜を問わずに三軸姿勢決定を可能にする。スターセンサに匹敵する0.1度の確度を目標とする。質量・容積・電力が制限されたナノサットにおいて、姿勢決定センサによるリソースの圧迫を解決する、先進的技術である。 本課題を申請した2015年終盤と比較し、ナノサットの開発と軌道投入の世界的な実績は、予想を超える速度で向上を続けている(2016年度、2017年度実績)。米民間企業の地球観測用キューブサットは太陽同期軌道に158機を配置完了し、群衛星の機体数としては世界最大である。また、2017年度の宇宙機総数の打上実績は360機を超え(前年は220機程度)、ナノサットの活発化が大きく寄与している。この状況の中、先進的かつ小型な姿勢決定装置の需要は益々高まっている。 本研究期間内(合計3年間)に、実際に衛星へ搭載可能な姿勢決定ユニットを試作する。平成29年度は、インタフェース(電気仕様、通信仕様、形状)の詳細を決定して、1式の試作機を開発した。観測センサ、データ処理基板、構造試験用冶具が含まれる。耐宇宙放射線能力を評価するために、ガンマ線照射試験、およびプロトン照射試験を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の当初計画は、衛星搭載機の試作の継続である。試作モデルには、カメラ部、FPGA ボード部、構造ケースが含まれる。評価試験の結果をもとに、機能評価モデルA・B を試作、評価する計画であったが、実際にはモデルAで当初目標を達成し、モデルBは省略した。衛星搭載品として、放射線耐性試験を優先して実施した。宇宙実績を重ねてきた既存の高感度CCDセンサ(640 x 480ピクセル相当)に加え、最新の高解像度CCDセンサ(1600x1200画素相当)を採用することとした。 具体的には、まず姿勢決定ユニットの仕様(電気、通信、形状)を決定し、地上系との通信を担うテレメトリ・コマンド処理ユニット(MPUボード)の仕様も同時に検討して実用性を向上させた。 姿勢決定ユニットの画像解析ボードには、CPU部とFPGA部の両方を併せ持つプロセッサ素子を決定した。この素子を使用した電子基板を新規に設計・製造する計画であったが、ナノサットにも適用できる寸法の既製品(50x40mm寸法)が安価であるため、これを調達して衛星用として使用する方針とした。 放射線耐性に関する評価として、ガンマ線照射試験(H29.4月)、プロトン照射試験(H30.1月)を実施した。前者はプロセッサ素子の経年劣化を評価し、後者は突発的な電気信号の乱れに対する耐性を評価する。同時に試験した別種のマイコンボード(ROMからプログラムを動作、ECCRAMを採用)と比較し、プログラム動作の安定度は相対的に低いことを確認した。しかし、加速試験(数年分のプロトンを短時間で照射)であるため、実用上の問題は生じないと判定した。 カメラ部および画像処理ボードに対して、環境試験を実施するために、ナノサット(30x10cm寸法)を再現した構造体を設計・製造した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度の計画として、当初計画通り、フライトモデルを試作、評価する。そして衛星搭載品として、真空温度環境への耐性、振動環境への耐性を評価する。平成29年度に製作した模擬ナノサット構造にカメラ部と画像処理ボードを搭載することで、すでに保有しているナノサット用の振動試験冶具や熱真空試験冶具と結合可能になる。また、画像解析ボードの搭載ソフトウェアおよびFPGAロジックの開発を進める。撮像画像(地球・太陽・月など)のシミュレーション環境を用いて、センサ画像を模擬して画像解析部の評価を実施するとともに、運用中の衛星であるRISING-2、DIWATA-1の撮像画像も処理可能であることを確認する。 最新のCCDセンサ(1600x1200画素相当)についても適用性を評価し、従来センサと比較して6.25倍のデータ量を処理できる基板の開発を実施するとともに、角度にして2.5倍の精度向上が達成できることを評価する。 旅費に関しては、意見交換のための研究打合せ、成果報告のために必要である。国内は年2回、国外は年1回を計画する。
|