本申請では、超小型衛星の1種であるナノサット(1~5kg)に搭載可能な、全方位カメラによる衛星姿勢決定ユニットを試作し、地上環境で評価する。試作ユニットは、民生用全方位カメラを参考とし、撮像センサとFPGAによる画像処理部を組み合わせた構成である。1つの撮像センサとオンボード画像解析で昼・夜を問わずに三軸姿勢決定を可能にする。スターセンサに匹敵する0.1度の確度を目標とする。質量・容積・電力が制限されたナノサットにおいて、姿勢決定センサによるリソースの圧迫を解決する、先進的技術である。 2018年度は、前年度に完了した試作機を用いて、画像解析部の搭載ソフトウェアおよびFPGAロジックの開発に注力した。センサの対象画像を地球に特化し、衛星姿勢角度に対応する地球撮像イメージを生成するシミュレーション環境を構築した。センサ模擬画像による画像解析部の評価を実施するとともに、運用中の衛星であるRISING-2の撮像画像も同処理部で解析可能であることを確認した。過去のフライト実績に基づき、30万画素のCCDセンサを使用すると、0.31degの精度(標準偏差)を達成できると評価した。200万画素の新型センサを使用することで、0.1~0.2degの精度に向上すると判定した。 2020年度後半以降にフライト実証機会を獲得したため、早期に衛星システムとして完成させるために、本姿勢センサとデータ通信するMPU(中央制御部)の仕様検討、および比較のための姿勢データを収集するIMU(慣性計測装置)ボードの検討を実施した。これらの周辺機器と合わせた構造設計の再検討も必要となったため、優先度を考慮し、当初計画していた姿勢センサ単体に対する振動や真空などの耐環境性評価を実施しない方針とした。
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