研究課題/領域番号 |
16K06922
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
城田 英之 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究グループ長 (40344238)
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研究分担者 |
大橋 厚人 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 上席研究員 (20358394)
横井 威 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 主任研究員 (20586698)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 粒子状物質(PM) / 排出インベントリ / 実船計測 |
研究実績の概要 |
交通機関に由来する粒子状物質(PM)のうち、船舶燃焼由来のPM(及び前駆物質)の多くは沖合海上で局所的に排出されることから、早くから陸上規制が強化されてきた自動車由来のPMとは異なり、船舶を対象とするPM環境規制値は設定されていない。しかし、PM2.5を取り巻く昨今の情勢に鑑みると、将来的に船舶由来のPMが問題視される可能性は極めて高いものと考えられる。 研究代表者はこれまで、AIS(船舶位置情報)等を利用して、我が国周辺海域で実船舶から排出される大気汚染物質を忠実に反映する船舶排出インベントリデータの作成を進めてきた。PMは、発生源から直接排出される一次粒子と、大気中で複雑な光化学反応を経て粒子化する二次粒子から成るなど複雑なため、PMデータの精緻化には、船上計測を含むより詳細なPM成分分析結果が必要である。しかしながら、NOxやSOxの捕集装置と比べて、PM捕集装置は運搬・設置に伴う支障が大きく、PM捕集装置を船上に持ち運んでPM捕集を行った事例は極めて少ない。 そこで平成28年度は、計測系内の損失評価及び複数システムでの相互保証を行った、当所所有の分流希釈システム(装置A)を基本として、PM捕集部分を分割・配置できるよう改良し、可搬式PM捕集装置から成る分流希釈システム(装置B)を製作した。さらに、当所のラボ実験用舶用ディーゼル機関において、装置Aと装置Bを使用したPM比較実験を実施し、PMの定量性が保証されていることを確認した。また、上記のPM組成分析結果を、大気質シミュレーション計算で使用する船舶排出インベントリデータの作成に適用するための検討を行った。さらに実船計測の準備として、複数船舶の機関室を対象に船上排気管における適切なPM計測箇所などについて調査検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、実船を用いた船上PM計測を実施するために不可欠な(可搬式PM捕集装置から成る)分流希釈システムの製作、及びPM定量性の保証が予定通り完了したことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29~30年度は、作成した分流希釈システム(装置B)を用いて、運転条件(停泊時/航行時)、機関種類(主機/補機)をパラメータとしてPM組成物質等を実船計測する。次に、取得したPM組成物質計測データ、及び研究分担者により予め取得されたラボ計測データ等に基づき、EC、OC、Nitrate、Sulfate等のPM組成に対するパラメータ解析を行い、船舶燃焼由来のPM組成への主要影響因子の洗い出しを行う。 PM組成物質の上記解析結果等に基づき、船舶燃焼由来のPM組成を航行時/停泊時別、主機/補機別、使用燃料油別に設定し、機関種類、運転条件、使用燃料等に応じて船舶のPM排出実態を表現したPM組成プロファイル(EC、OC、Nitrate、Sulfate等の組成割合一覧)を作成する。さらにこのプロファイル用いて作成した船舶排出インベントリデータを用いて大気質シミュレーション計算を実施し、従来の計算結果及び陸上観測局におけるPM観測値等と比較することにより感度解析を行い、本研究で作成したPM組成プロファイルの性能を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度末に(時間的余裕があれば)平成29年度予定の実船実験の一部を前倒しして行う予定としていたが、実際にはそこまで進なかったため、実験用消耗品(の一部)、実船実験用国内旅費、及び実船計測補助用研究支援者雇用費に関連する未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度には、当初計画通りの実船実験を実施する予定としており、平成28年度未使用額も使用する見込みである。
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