研究課題
これまで、我々はプリオン感染に対しIRF3の転写因子が抑制的に働くことを明らかにし、そのIRF3の発現もプリオン感染により抑制されることも確認した。本年度は、そのプリオンの宿主内侵入機構の解明として、プリオンの細胞内感染経路を明らかにするためIRF3 の上流に位置するPattern Recognition Receptors (PRRs) のシグナル経路の違いに着目して、TLR3 の下流に位置するTICAM-1(別名Trif)およびRIGI, MDA5 の下流に位置するMAVS (別名IPS-1)それぞれの遺伝子欠損マウスから樹立したMEFを用いてプリオン感染実験を行い、異常型PrP の発現について検討することを目的とした。Ex vivoプリオン感染実験のために、TICAM1およびIPS1それぞれの遺伝子改変マウス由来のmouse embryonic fibroblast (MEF)にSV40 Large-Tの遺伝子を組み込んだMSCVのウイルスベクターを感染させ、puromycinで薬剤選択し、不死化細胞を樹立すると共に、Large-Tによるプリオン感染の影響を考慮するためにウイルスベクターを使用せずに不死化するまで継代し続けた細胞も樹立した。Ex vivoプリオン感染実験のコントロールとして不死化した野生型(WT)のMEFへのプリオン感染実験を行い感染に用いるプリオン病発症マウスの脳乳剤の量や感染成立までの時間、継代回数などを検討し、異常型プリオン蛋白の発現について検討した。プリオン感染における自然免疫関連因子発現の特徴を検討するために、リアルタイムPCR 法を用いて、経時的に解析することで複数のISGs遺伝子の発現変化に影響があることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
研究課題に対し、概ね順調に進んでいる。通常の細菌やウイルス感染とは異なり、プリオン感染実験には感染成立まで時間を要するため、今後も慎重かつ丁寧に研究を進めていかなければならない。
本年度、Ex vivoプリオン感染のための不死化細胞の樹立に成功したことにより、より実験の進行が早まると考える。プリオン感染実験には感染成立まで時間を要するため、今後も慎重に研究を進めていかなければならないが、進捗状況が思わしくないときは、プリオン感染病態細胞モデルと動物モデル等を考慮し、同時に進行する予定である。
本年度は、不死化細胞樹立に時間を要したこともあり、使用予定金額に変更が生じたが、次年度に請求した助成金と共に研究項目に対して随時使用する予定である。
一般試薬・消耗品、実験動物の購入、成果発表に関する旅費等、計画書に沿って使用予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 産業財産権 (1件)
Scientific reports
巻: 6 ページ: 24993
10.1038/srep24993.
EBioMedicine
巻: 9 ページ: 238-249
10.1016/j.ebiom.2016.06.010