研究課題
転写因子IRF3がプリオン感染に対して抑制的に働くことを明らかにしたことより、IRF3の下流に位置するI型インターフェロンを介したプリオン感染に対する影響について検討を行ってきた。今年度の研究では、培養細胞を用いたプリオン感染病態モデルにて、I型インターフェロンとプリオン感染との関与について検討した。I型インターフェロン受容体遺伝子欠損マウスの胎児より、繊維芽細胞(mouse embrionic fibroblast: MEF)を単離し、細胞不死化のためにSV40 LArge-Tの遺伝子を組み込んだMSCV(Murine Stem Cell Virus)レトロウイルスベクター感染を行い、puromycinを用いて薬剤選択による不死化細胞の樹立を行った。さらに不死化した細胞にI型インターフェロン受容体遺伝子を再導入し、I型インターフェロン受容体恒常発現細胞を樹立した。樹立後の細胞を用いて、ウエスタンブロット法にて正常プリオンタンパク、I型インターフェロン受容体の発現を確認し、I型インターフェロン受容体遺伝子導入による正常プリオンタンパクの発現に影響は無かった。また、フローサイトメトリーを用いた正常プリオンタンパクおよびI型インターフェロン受容体の発現の検討を行い、細胞表面におけるそれぞれのタンパク発現を確認した。ぞれぞれの細胞にプリオン感染を行い感染効率について検討した。I型インターフェロン受容体を発現した細胞では、遺伝子欠損細胞に比べプリオン感染に対し抵抗性を示した。これらの結果は、プリオン感染とI型インターフェロンのシグナル経路が密接に関係していることを示唆するデータであることから、今後も詳細な解析が必要である。
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