研究課題
ヘテロクロマチンプロテイン1(HP1)を脳特異的に欠損したマウス(cKOマウス)にテストバッテリー方式の行動解析を実施したところ,オープンフィールドや明暗往来テストなどの新奇場面において低活動性を呈した.また,強制水泳場面での無動時間の増大も同時に見られ,不安・うつ様の病態モデルで見られる行動特性が確認された.この行動特性が不安・うつの表現型か否かを検討する目的で,ヒトに処方される抗不安薬(ジアゼパム)および選択的セロトニン取込阻害薬(SSRI)であるフルオキセチンを投与して,行動薬理学的解析を実施した.その結果,低活動性はどちらの薬物によっても改善されることはなく,cKOマウスの低活動性は少なくともGABA神経伝達回路,セロトニン神経伝達回路の機能障害に起因する物ではないことを確認した.また,cKOマウスの低活動性の原因の一つとして,無感覚状態(anhedonia)を想定して新たな行動解析(ショ糖選好テスト)で検討したが,ショ糖に対する選好性はcKOマウスも対照群のマウスと同程度であり,無感覚状態の可能性も排除された.そこで,2017年度はcKOマウスの低活動性はドーパミン神経系機能の不全であることを仮定して,メタンフェタミンを始めとしたドーパミン作動薬を用いた行動薬理学的解析を行った.メタンフェタミン投与下でのcKOマウスの活動性上昇は対照群と比較して,より顕著なものであったことから,ドーパミン神経系に関わる受容体,合成酵素,分解酵素,開口分泌関連の遺伝子発現変動をRT-qPCRによって解析した.また脳切片を用いてc-fos染色を行い,cKOマウスの低活動性に関わる脳領域を同定を試みた.
2: おおむね順調に進展している
予定していた行動薬理学的検討を行い,cKOマウスの行動変容がドーパミン神経系の機能不全によることを示唆する結果を得た.また,ドーパミン神経系に関わる遺伝子の発現変動について,網羅的に検討することができ,研究はおおむね順調に進展している.
cKOマウスの行動変化に関わる脳部位の検討を行う.特にドーパミン神経の終末部である線条体,海馬,大脳皮質について各種の抗体を用いて免疫染色を行う.また,ニューロンの活動低下が予測されることからc-fos染色によって,各脳部位の活動変化を組織学的に検討する.
当初予定していた行動解析を見送ったため,解析に必要であってPCならびに解析ソフトの購入を中止したため.
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
Frontiers in Behavioral Neuroscience
巻: 11 ページ: -
10.3389/fnbeh.2017.00075.
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