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2017 年度 実施状況報告書

グルタミン代謝経路の解明による新規がん治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K07115
研究機関神戸大学

研究代表者

入野 康宏  神戸大学, 医学研究科, 特命助教 (10415565)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードがん細胞の特性 / グルタミン代謝 / アンモニア
研究実績の概要

グルタミン代謝(グルタミノリシス)は、がん治療のターゲットであるとされてきた。増殖中の細胞はグルタミンに依存しない代謝経路を使い増殖していることを今までの研究で明らかにしたので、この分子機序を明らかにすることを本年度の研究目的とした。

その結果、がん細胞は、グルタミン減少時にはグルタミン代謝の副産物であるアンモニアを利用して、生存していることがわかった。グルタミン飢餓状態にアンモニアを添加すると、部分的にではあるが細胞増殖を維持できることを明らかにした。しかし、ある特定のがん細胞のみでアンモニアによる細胞増殖の回復が認められた。その原因は、アンモニアを用いてグルタミン酸を合成する酵素(GDH2)の働きに依存しているのではないかと考えた。実際にこの酵素(GDH2)をRNAi法を用いてノックダウンするとアンモニアによる細胞増殖が抑えられた。さらにGDH2を人為的に発現させたがん細胞は、グルタミン飢餓状態にアンモニアを添加すると細胞増殖が維持できることが確認できた。つまり、グルタミン飢餓状態におけるアンモニアの再利用はGDH2に依存していることが明らかになった。このことから、GDH2の発現パターンはがん細胞の代謝を変化させ、それががんの多様性の原因となっていることが考えられる。

グルタミン代謝が亢進した腫瘍の中心部では、グルタミン濃度は低くアンモニア濃度が高くなっており、細胞の生存に不利な環境となっていると考えられる。この環境に適応するためにがん細胞はGDH2を発現させて老廃物であるアンモニアまでも利用して増殖能を獲得しているのではないかと示唆される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

がん細胞が栄養飢餓下にどのように応答して生存しているかについてはいまだ不明な点が多いが、本年度の研究によって、栄養飢餓状態では、老廃物として考えられていたアンモニア利用してがん細胞の生存を助けていることを見出した。さらにGDH2を発現している細胞のみがこの機構を利用できることが分かった。これらの知見を学会で発表するとともに、学術論文として発表することができたので、本研究はおおむね順良に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

現在までの研究によって、グルタミン飢餓に適応するために、がん細胞はGDH2を発現させ細胞毒性を有するアンモニアを積極的に取り込むことで、がん細胞の増殖に有利な環境を構築していることが示唆された。グルタミン代謝が亢進した腫瘍の中心部では、グルタミン濃度は低くアンモニア濃度が高くなっており、細胞の生存に不利な環境となっていると考えられる。本研究成果を発展させて、この環境に適応したがん細胞は増殖能を獲得しつつ、がんが伸展するという仮説を検証する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Glutamate production from ammonia via glutamate dehydrogenase 2 activity supports cancer cell proliferation under glutamine depletion2018

    • 著者名/発表者名
      Takeuchi Yukiko、Nakayama Yasumune、Fukusaki Eiichiro、Irino Yasuhiro
    • 雑誌名

      Biochemical and biophysical research communications

      巻: 495 ページ: 761~767

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2017.11.088

    • 査読あり
  • [学会発表] グルタミン酸デヒドロゲナーゼ2はアンモニアからグルタミン酸を産出し、グルタミン飢餓状態の細胞増殖を助ける2018

    • 著者名/発表者名
      入野 康宏
    • 学会等名
      がんと代謝研究会・若手の会
  • [学会発表] アンモニアを利用するがん細胞は栄養飢餓状態でも生存できる2017

    • 著者名/発表者名
      入野 康宏、竹内 由紀子、中山 泰宗、福崎 英一郎
    • 学会等名
      第42回日本医用マススペクトル学会
  • [学会発表] アンモニアを利用するがん細胞は栄養飢餓状態でも生存できる2017

    • 著者名/発表者名
      入野 康宏、竹内 由紀子、中山 泰宗、福崎 英一郎
    • 学会等名
      第5回がんと代謝研究会
  • [学会発表] Utilization of ammonia supports cell survival under glutamine depletion2017

    • 著者名/発表者名
      竹内 由紀子、中山 泰宗、福崎 英一郎、入野 康宏
    • 学会等名
      生命科学系学会合同年次大会

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公開日: 2018-12-17  

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