研究実績の概要 |
解析したETBR・ET-1複合体構造から相互作用に関わる重要残基を同定し、これらの変異体の結合実験によって、立体構造がほぼ正しいことを確認した。しかしながら、20残基前後が相互作用に関わるために、どの残基によるどの相互作用がリガンド認識や結合に寄与が大きいのかが明確に理解できなかった。この点を明らかにするために、ETBR が高い親和性を保持しているET-1の8-21残基に相当するペプチド(N-acetyl-[Ala11,15]ET-1(8-21))を基礎として、各アミノ酸残基をアラニン等に変異した17種類のペプチドを調製して結合実験を行い、各Ki値を測定した。その結果、ET-1のC末L17, D18, I20, W21のアラニン置換が100倍以上、親和性を低下させることが明らかとなった。また、I19L変異においても同様なことが観察され、結合部位には立体構造上、極めて厳密な制限があることが判明した。 構造解析した、リガンドフリー状態とET1結合状態の構造を比較すると、ヘリカルバンドル内に形成される複数の水分子を含む水素結合ネットワークに再編が起こっていることがわかった。この再編成によって、N119, D147, N382らは直接水素結合する。これらの水素結合形成が、実際のETBRの活性化に重要であることを確認するために、これらの変異体について、昆虫細胞で大量発現させ精製後、apoA-1や脂質と混合してナノディスクに再構成した。これらの組み換えナノディスクを用いてGi活性化を調べたところ、N119A, D147A, N382Aにおいて、ほぼ活性化能は消失した。これらのことから、ET1結合構造は、細胞内第3ループがT4lysozymeで固定されているために最終的な活性化構造に変化できなかったが、活性化の途中の過程には進んだ構造であろうと考えられる。
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