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2016 年度 実施状況報告書

化学療法・放射線治療を促進するエンドセリンB型受容体アゴニストの創薬展開

研究課題

研究課題/領域番号 16K07172
研究機関京都大学

研究代表者

土井 知子  京都大学, 理学研究科, 准教授 (00397580)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード分子標的治療 / 血管内皮細胞
研究実績の概要

解析したETBR・ET-1複合体構造から相互作用に関わる重要残基を同定し、これらの変異体の結合実験によって、立体構造がほぼ正しいことを確認した。しかしながら、20残基前後が相互作用に関わるために、どの残基によるどの相互作用がリガンド認識や結合に寄与が大きいのかが明確に理解できなかった。この点を明らかにするために、ETBR が高い親和性を保持しているET-1の8-21残基に相当するペプチド(N-acetyl-[Ala11,15]ET-1(8-21))を基礎として、各アミノ酸残基をアラニン等に変異した17種類のペプチドを調製して結合実験を行い、各Ki値を測定した。その結果、ET-1のC末L17, D18, I20, W21のアラニン置換が100倍以上、親和性を低下させることが明らかとなった。また、I19L変異においても同様なことが観察され、結合部位には立体構造上、極めて厳密な制限があることが判明した。
構造解析した、リガンドフリー状態とET1結合状態の構造を比較すると、ヘリカルバンドル内に形成される複数の水分子を含む水素結合ネットワークに再編が起こっていることがわかった。この再編成によって、N119, D147, N382らは直接水素結合する。これらの水素結合形成が、実際のETBRの活性化に重要であることを確認するために、これらの変異体について、昆虫細胞で大量発現させ精製後、apoA-1や脂質と混合してナノディスクに再構成した。これらの組み換えナノディスクを用いてGi活性化を調べたところ、N119A, D147A, N382Aにおいて、ほぼ活性化能は消失した。これらのことから、ET1結合構造は、細胞内第3ループがT4lysozymeで固定されているために最終的な活性化構造に変化できなかったが、活性化の途中の過程には進んだ構造であろうと考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

結晶化に必要な熱安定化受容体をリガンド-フリー状態でスクリーニングしたことで、その熱安定化受容体(Y5-ETBR)については、アンタゴニスト(ボセンタン)結合状態でも結晶構造解析ができ、現在、論文改訂中である。

今後の研究の推進方策

ETBRの変異体の発現精製、ナノディスク(HDL)への再構成は、Gタンパク質活性化を検定できる重要なアッセイ系であるが、変異体によっては精製再構成に耐えられず部分変性の可能性もある。この点を補うために、精製せず細胞膜そのままでGタンパク質活性化を測定するシステムを検討する。HDLと細胞膜系の両方を検討することで、定性的定量的な比較が可能となる。
アンタゴニスト、ボセンタンの結合部位残基を、その変異体の結合実験によって確認し、アゴニスト(ET-1)結合によっておこる構造変化に重要な残基と比較する。これにより、アゴニスト特異的な相互作用を特定する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Thermostabilization of the Human Endothelin Type B Receptor.2016

    • 著者名/発表者名
      A. Okuta, K. Tani, S. Nishimura, Y. Fujiyoshi & T. Doi.
    • 雑誌名

      J. Mol. Biol.

      巻: 428 ページ: 2265-2274.

    • DOI

      10.1016/j.jmb.2016.03.024

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Activation Mechanism of Endothelin ETB Receptor by Endothelin-12016

    • 著者名/発表者名
      W. Shihoya, T. Nishizawa, A. Okuta, K. Tani, N. Dohmae, Y. Fujiyoshi, O. Nureki, & T. Doi.
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 537 ページ: 363-367

    • DOI

      10.1038/nature19319

    • 査読あり
  • [学会発表] エンドセリン受容体のリガンド認識機構の研究2017

    • 著者名/発表者名
      土井知子
    • 学会等名
      薬学会第137年会
    • 発表場所
      仙台国際センター(宮城)
    • 年月日
      2017-03-24 – 2017-03-27
  • [学会発表] Human Mutations in Endothelin A Receptor Provide an Insight into Structural rearrangement in GPCR2017

    • 著者名/発表者名
      Y. Kurihara, T.Doi,C.T. Gordon, J. Amiel, H. Kurihara
    • 学会等名
      Molecular Pharmacology Gordon Research Conference
    • 発表場所
      Renaissance Tuscany II Ciocco Lucca (Barga), Italy
    • 年月日
      2017-03-12 – 2017-03-17
    • 国際学会
  • [学会発表] エンドセリン-1によるエンドセリンB受容体の活性化機構2016

    • 著者名/発表者名
      西澤知宏, 志甫谷渉, 奥田明子, 谷一寿, 藤吉好則, 濡木理 , 土井知子
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川)
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
  • [学会発表] GPCR エンドセリン A 受容体変異マウスによるヒト希少疾患の病態解明と予後の推測2016

    • 著者名/発表者名
      栗原由紀子、北沢太郎、小谷理紗、Christopher T. Gordon、河村悠美子、益田将、土井 知子、Jeanne Amiel、栗原裕基
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川)
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
  • [学会発表] エンドセリン受容体B型によるエンドセリン認識の構造基盤2016

    • 著者名/発表者名
      志甫谷渉、西澤知宏、奥田明子、谷一寿、藤吉好則、濡木理、土井知子
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川)
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
  • [学会発表] 結晶構造から明らかになった、エンドセリン-1 によるエンドセリン受容体 B 型の活性化機構2016

    • 著者名/発表者名
      志甫谷渉、西澤知宏、奥田明子、谷一寿、藤吉好則、濡木理、土井知子
    • 学会等名
      第54回生物物理学会年会
    • 発表場所
      つくば国際会議場(茨城)
    • 年月日
      2016-11-25 – 2016-11-27
  • [学会発表] 臨床薬ボセンタンの結合したエンドセリン受容体B型の結晶構造2016

    • 著者名/発表者名
      志甫谷渉、西澤知宏、奥田明子、谷一寿、藤吉好則、濡木理、土井知子
    • 学会等名
      第11回日本ケミカルバイオロジー学会
    • 発表場所
      京都テルサホール(京都)
    • 年月日
      2016-06-15 – 2016-06-17

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公開日: 2018-01-16  

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