研究課題/領域番号 |
16K07172
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
土井 知子 京都大学, 理学研究科, 准教授 (00397580)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | GPCR / エンドセリン / 3量体Gタンパク質 |
研究実績の概要 |
肺性高血圧症の治療薬であるBosentanおよびBosentan誘導体のK8794を結合したETBRの結晶構造をそれぞれ3.6Å、2.2Åの分解能で解明し、Nature Structuraland Molecular Biologyに発表した。K8794結合型ETBでは5残基の熱安定化変異を含む変異体を用い、Bosentan結合型では1残基を野生型に戻して4残基の変異を持つ受容体を使用することで結晶解析に成功した。これらのアンタゴニスト結合構造では、以前に観察したリガンドフリー構造と同様に膜貫通ヘリカル領域にNa+結合が観察されなかった。ETAサブタイプとは異なり、ETBのET1結合は生理的濃度のNa+によって阻害されず、ETBの不活性構造はNa+の変わりに水分子を介する水素結合ネットワークによって安定化されていると考えられた。また、アゴニストET-1のC末領域はリガンド親和性に大きく寄与する領域であるが、Bosentanはこの結合ポケットによく重なって結合していることが判明した。これらの知見は、アゴニスト設計にとって非常に重要である。 活性構造形成の評価系としてGタンパク活性化能を調べるアッセイが、動物細胞に各種変異受容体とGiアルファサブユニットを共発現させた細胞膜を用いてGTPgammaS35の取り込みを検出することで可能になった。変異受容体の濃度は、saturation bindingにおけるBmaxから推定し、Giアルファは膜タンパク量を揃えることで受容体に対しておおよそ同等量が存在するように調製して、野生型と比較した。この手法で、すでにナノディスクでGタンパク活性可能を測定している水分子水素結合ネットワークの変異体の評価を行ったところ、ナノディスク評価系とよく一致することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アンタゴニスト結合構造が得られたことで、アゴニスト結合構造との比較が可能となり、アゴニストの分子設計において、どのような相互作用が受容体にとって必要なのかを絞りこめるようになっている。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度にリガンド親和性をすでに調べているが、ペプチドアゴニスト(N-acetyl-[Ala11,15]ET-1(8-21)を基にした一連のアラニン変異体について、ETBの受容体活性化能を評価して、どの残基との相互作用が受容体のGタンパク質活性化のefficacyやpotencyに重要なのかを明確にする。これにより、ETBのアゴニストに必要な条件が明らかになると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
H30年度に計画しているETB活性化構造を形成する機構を研究する多数の変異体作成のために、消耗品(プライマー)購入とDNA配列決定のために使用する。
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