研究課題
日本に生息するすべての双翅目チョウバエ科昆虫サシチョウバエ種を明らかにし、生息環境を把握するため調査を本年度行った。これまで,分布記録のなかった東京都(西多摩郡奥多摩町および八王子市)においてサシチョウバエ成虫の生息を確認した。サシチョウバエはヒマシ油含有トラップ法により捕獲され(標高390m~400m)、主にメスのcibariumおよびspermatheca、オスのgenitalia、coxiteおよびstyleによる形態学的同定法により、これらのサシチョウバエはSergentomyia squamirostrisであると同定した。これまでの調査によりSergentomyia属サシチョウバエは青森県から沖縄県まで広く分布することが明らかとなり、九州、沖縄を除く本州および四国においてはS. squamirostrisのみが生息していることが示唆された(Sanjoba, et al. accepted)。東アジアにおけるサシチョウバエと形態学的および分子遺伝学的に比較検討することで東アジアにおけるサシチョウバエの種多様性を明らかにする目的のため、本年度は1985年からサシチョウバエ調査が行われていない台湾において、Phlebotomus属およびSergentomyia属サシチョウバエ35頭採集し、形態学的同定および遺伝子学的系統解析を行った。形態学的解析の結果、Sergentomyia属サシチョウバエが主に生息していることが明らかとなった(国際フレボトムス学会にて発表、France)。Cytochrome b遺伝子をターゲットした系統解析により台湾産サシチョウバエは4つのclusterに分かれた。
2: おおむね順調に進展している
雌サシチョウバエから吸血源由来のDNAを抽出しシークエンスにより吸血源となる動物種を明らかにすることも目的の一つとしているが、本年度、国内採集した雌サシチョウバエは未吸血個体を多数がしめ、吸血源動物種の特定には至らなかった。今後は吸血時期等を考慮したサシチョウバエ採集および採集法に努める。
日本に生息するすべてのサシチョウバエ種を明らかにし、生息環境、吸血源等生態学的解析を行い、国内における分布域マップを作成するために、初年度同様の解析を行うともに、採集地域の地形、植生構造、気温、湿度、標高の集積解析を行い、分布可能域および生態的優先度を推定する。さらに新種を見出した九州地方および沖縄県を再度調査対象地とし、新種の形態学的精査し新種登録するとともに、種ごとの生育環境の比較解析を行う。さらに東アジアにおけるサシチョウバエと形態学的および分子遺伝学的に比較検討することで東アジアにおけるサシチョウバエの種多様性を明らかにするために、引き続き台湾サンプルの形態学的特徴の精査を行い、遺伝子学的解析の結果と比較検討する。また海外研究協力者の協力のもと得られた中国産サシチョウバエの形態学的的特徴の比較解析を開始する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Med Entomol Zool
巻: 2 ページ: 印刷中
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