研究実績の概要 |
日本に生息するすべてのサシチョウバエ種を形態学的分類、分子遺伝学的分類により明らかにし、生息環境を把握するための調査を昨年度に引き続き行った。諸島を除く九州地方における調査は、1952年の福岡県で実施された1調査のみであることから、本年度はこれまで調査の行われていない鹿児島県および長崎県にてオイルトラップ法によるサシチョウバエの採集調査を行った。長崎県では東彼杵郡をサシチョウバエ生息好適地と推測したところ、Sergentomyia squamirostris が高密度で生息することを確認した。本年度の調査により北海道を除く、本州、四国地方、九州地方、沖縄本土にS. squamirostris が生息することが明らかとなった。また、群馬県みなかみ町、新潟県佐渡市、鹿児島県屋久島をモデル地域としたサシチョウバエの経時的採集の結果、季節消長が明らかとなり、成虫密度の高い時期が予測可能となった。 さらに、東アジアにおけるサシチョウバエの種多様性を明らかにする目的のため、中国、江西省、雲南省、広西省、四川省にて採取されたサシチョウバエ(Phlebotomus chinensis, P. stantoni. P. yunshengensis, P. kiangsuensis, P. lengi, S. barraudi, S. squamirostris, etc.)を得て、形態学的および分子遺伝学的比較解析を開始した。
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