系統発生を推定する上で重要な情報をもたらす個体発生の研究は多くの動物について行われているが、尾腔類については1編の論文しかなく、変態から成体への発生過程については、情報が欠如していた。本研究では尾腔類の1種の産卵・受精から変態後約10日目までの発生過程を観察し、本種がこれまで軟体動物のなかでは知られていなかった発生過程をもつことを見出した。観察した幼生の形態は上記論文の1種や、近縁と考えられている溝腹類のものと比較した結果、重要な類似点と相違点が認められた。これらの情報は軟体動物内、あるいは軟体動物と他の冠輪動物との間の系統関係を推定するための新たな情報として意義のあるものと考えられる。
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