研究実績の概要 |
昨年度までに作出してきた、炊飯米の食味(おいしさ)を向上させる効果を持つ遺伝子座(QTL)の候補遺伝子に関する突然変異系統群や形質転換系統群を栽培して、食味関連形質を評価した。炊飯賞味計やテンシプレッサーを用いた機器分析により、候補遺伝子の配列中にアミノ酸置換を持つ突然変異系統、RNAiノックダウン形質転換体および過剰発言形質転換体において炊飯米の食味値が低下し、炊飯米の粘りが小さくなった。候補遺伝子の機能を調査するために、機能型の遺伝子配列を持つ系統と欠損型の遺伝子配列を持つ系統を栽培し、登熟中の胚乳におけるRNA-seq解析を実施した。機能型の遺伝子配列を持つ系統では、澱粉合成遺伝子の合成や輸送にかかわる遺伝子群の発現レベルが上昇していた。さらに、候補遺伝子に由来するタンパク質を酵母細胞内で人工合成して、タンパク質の酵素活性量を測定した。 また、日本水稲品種群の約180品種の3年間の収穫米について、3,000以上のSNPsと200以上の炊飯米食味評価データ値を用いたゲノムワイドアソシエーション解析を行い、食味形質の違いに関係する約540ヶ所の遺伝子座(QTLs)を検出した。食味に関与する遺伝子座はイネの全12本の染色体すべてに検出されたことから、炊飯米の食味は多数の遺伝子に制御される複雑形質であると確認できた。これらの遺伝子座の多くは胚乳中で澱粉合成に携わる遺伝子のゲノム領域に見いだされ、澱粉合成遺伝子の自然変異が日本水稲品種の炊飯米の食味の違いに寄与している可能性が示唆された。
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