研究課題/領域番号 |
16K07799
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
壁谷 直記 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 (40353651)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 熱帯モンスーン気候 / 常緑林 / 土砂流出 |
研究実績の概要 |
世界では年間5.2万km2 の森林が消失しており、東南アジア諸国においても森林減少は深刻な問題である。森林伐採による土壌侵食量の増加は、河川下流の河床上昇を引き起こし、洪水氾濫のリスクを増大させる可能性がある。そこで、東南アジアで比較的豊かに森林が残っているカンボジアの熱帯モンスーン常緑林流域を対象に、土地利用の違いが水と土砂の移動特性に及ぼす影響を解明することを目的として、現地観測を実施した。本年度は、本研究では斜面傾斜が異なるカンボジアの森林内での侵食ピンプロット試験を実施した。その結果,10 mm以上の侵食もしくは堆積が発生した箇所は斜面傾斜が10度の森林内では,18~20 %に限られることがわかった。斜面傾斜が10度の森林内では,3回計測した侵食ピンの平均値は,±1 mm以内であった。既往研究では温帯湿潤地域の森林内では,林床被覆がある場合,裸地でみられるようなリル・ガリーなどの形態による表面侵食は防止され,雨滴衝撃による土粒子の結合破壊が主な侵食営力となると考えられいた。今回の研究結果は,熱帯モンスーン地域の常緑林においても,斜面傾斜10度の森林内においては,林床被覆があれば侵食はほとんど起きないことを現地観測データにより示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地観測の結果、林床がリターで被覆されている傾斜10度の森林斜面においては、ほとんど侵食が生じていないことが明らかとなった。また、個別の土地利用ごとの土砂流出特性の解明のための侵食プロットの降雨ごとの水と土砂のサンプリングを継続した。これらのことから、研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
侵食ピンプロットおよび堆積土砂測定用簡易堰の観測を継続し、斜面および流域スケールの土砂移動の実態把握を進める。また、侵食斜面プロットのデータをとりまとめ土地利用ごとの土砂生産量ポテンシャルを把握する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)前年度より懸案の自動採水器(58万円)の設置場所に関して、現地で測器の浸水や盗難などの面から観測可能に設置できる場所を探したが引き続き検 討を要している。このため自動採水器購入を次年度に見送った。 (使用計画)新たな設置場所を見つけ次第、自動採水器の購入を進める。
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