本研究では、木材腐朽菌とシロアリとの生物間相互作用の中で、木材腐朽菌に由来する揮発性有機化合物が、どのような意味を持つ「情報」としてシロアリに認識され、誘引/忌避行動などを誘発するのかを菌種ごとに解析し、そのMVOC成分を明らかにすることを目的している。今年度は,前回の科研費研究(平成25~27年度の科学研究費補助金 若手研究(B)課題番号25850126「担子菌由来の揮発性メタボライトをトレーサーにした新たな腐朽探知法の確立」)で明らかにしたMVOC成分に対するシロアリの嗅受容細胞の反応を解析した。具体的には,褐色腐朽菌オオウズラタケ(Fomitopsis palustris、MAFF 420001)、および白色腐朽菌カワラタケ(Trametes versicolor、MAFF 420002)のMVOC,13成分を匂い源とし,標品を用いたヤマトシロアリの行動実験を行った。具体的には茨城県内で採集したヤマトシロアリの職蟻を1回の実験で50頭使用し、各匂い成分に対して5回繰り返して匂いによる誘引/忌避行動の有無を調べた。ただし、その結果から本実験方法によるヤマトシロアリの匂い源に対する誘引/忌避行動の有無について明らかにすることができなかった。ただし、イエシロアリについては、誘引成分の特定に至った。そのため、誘引性の成分に暴露したイエシロアリ固体と非暴露のイエシロアリ固体について、遺伝子発現解析を行った。しかしながら、新型コロナウイルスの影響で外注していた発現解析が予定通りに進まず、結果をまとめるまでには至っていない。
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