研究課題/領域番号 |
16K07839
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
婁 小波 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (50247970)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 漁村地域活性化 / ビジネスモデル / 連携 / 共同企業体 / コミュニティビジネス |
研究実績の概要 |
本研究ではグローバル経済下において厳しい国際競争に直面し、過疎化・高齢化・空洞化が進む漁村地域経済の再生をめざして、新たな漁村地域ビジネスモデルを構築することを目的としている。具体的には、ビジネスモデルのデザイン手法を援用しつつ、①効率的かつ持続可能な漁業経営を実現しうる共同企業経営モデル、②魅力的な食産業を創出するための6次産業化を推進するための連携ビジネスモデル、③地域資源を価値創造するコミュニティビジネスモデル、の三つのビジネスモデルの開発を目指している。平成28年度においては、主に二つのことに取り組んできた。 第1は、ビジネスモデルを分析するための枠組みの確立である。ここでは、漁村地域ビジネスモデルを構成する諸要素を抽出するとともに、漁業・漁村という産業分野の特質に即した有効な共通の分析枠組みの開発を行った。第2は、想定されるそれぞれのビジネスモデルの代表的な事例を抽出し、共通の分析枠組みを用いてケーススタディを実施した。共同企業経営モデル分析の対象事例としては、北海道猿払漁協のホタテ共同企業経営体、千葉県東安房漁協のアワビ漁業経営などを、連携ビジネスモデル分析の対象事例としては、沖縄勝連漁協、読谷村漁協、伊平屋漁協とコープおきなわとの連携事業などを、コミュニティビジネスモデル分析の対象事例としては、岩手県田老漁協(自営加工)、静岡県富戸漁協(ダイビングセンター)などをそれぞれ取り上げて調査を行った。 分析成果の一部は論文(婁小波「漁業の6次産業化と連携のビジネスモデル」、地域文化学会誌『地域文化研究』、第18号、2017年3月)として刊行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、以下の四つの手順に沿って進めることとしている。(1)ビジネスモデルのデザイン手法を用いて、ビジネスモデルを構成する共通要素を抽出し、共通の分析枠組みを構築する、(2)それぞれのモデルの代表的な事例を選定して、フィールドワークにもとづくケーススタディを行う、(3)事例分析によって得られた知見を一般化するための理論分析を行い、それぞれのビジネスモデルのプロットタイプを提示し、その特徴と成立条件を解析する。(4)それぞれのビジネスモデルを、具体的な実践事例への適用を図ることで、モデルの有効性を検証し、その機能メカニズムを解明する。平成28年度では、当初計画の通り、(1)および(2)について研究を進めて、順調に研究を遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度では、事例分析に関する補足調査を実施するとともに、(3)ビジネスモデルのプロットタイプの提示と条件分析を行う予定である。それぞれのケースに該当するビジネスモデルの共通特性を抽出し、三つのビジネスモデルのプロットタイプを提示する。その上で、それらが有効なビジネスモデルとして機能するための諸条件を抽出する。なお、必要に応じて新たな事例についても調査を実施する予定である。 平成30年度においては、(4)ビジネスモデルの有効性検証と機能メカニズムの解明を実施する予定である。それぞれのタイプのビジネスモデルの有効性(効率性・効果性・発展性・戦略性)を検証するために、各タイプのビジネスモデルを漁村の現場に戻して検証を行う予定である。検証結果を踏まえて、参加経営体へのアンケート調査により、開発した三つのビジネスモデルの経済性(例えば、コスト低減メカニズムとしての規模の経済性、範囲の経済性、ネットワークの経済性、取引コストの低減など、価値向上メカニズムとしての学習効果、シナジー効果、システム効果、バリューチェーン効果など)を分析し、その機能メカニズムを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、ケーススタディのための対象事例を複数選択し、それぞれの対象事例について予備調査・本調査・補足調査などを行うこととしているが、いくつかの事例に関しては、予備調査と本調査まで実施し、先方とのスケジュール調整や十分な情報の入手などで年度内での補足調査の実施を見送ることとした。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度においては、これまで実施しなかった補足調査を実施するとともに、必要に応じて調査対象事例を新たに加えることにするなどして、念密なフィールドワークを行う予定である。
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