グローバル経済の進展に伴い、日本漁業の競争力は低下し、この30年もの間に生産量や漁船隻数・経営体数などの生産力はいずれも半減し、地域社会は深刻な人口減・高齢化・過疎化・空洞化問題に直面している。このままだと、独自の魚食文化を支えてきた漁業・漁村の崩壊は加速化され、近い将来町村消滅や自給率の低下などの深刻な食料安全保障問題が懸念されている。 そこで、本研究ではこうした厳しい状況下にある漁村地域経済の再生をめざして、新たな漁村地域ビジネスモデルを構築することを目的として設定している。具体的には、ビジネスモデルのデザイン手法を援用しつつ、①効率的かつ持続可能な漁業経営を実現しうる共同企業経営モデル、②魅力的な食産業を創出するための六次産業化を推進するための戦略的連携ビジネスモデル、③地域資源を価値創造するコミュニティビジネスモデル、の三つのビジネスモデルを開発する。 今年度においては、開発したビジネスモデルの有効性の検証とその機能メカニズムの解明を課題に取り組んだ。その際、それぞれのタイプのビジネスモデルの有効性(効率 性・効果性・発展性・戦略性)と経済性(例えば、コスト低減メカニズムとしての規模の経済性、範囲の経済性、ネットワークの経済性、取引コストの低減など、価値向上メカニズムとしての学習効果、シナジー効果、システム効果、バリューチェーン効果など)を分析し、その機能メカニズムの解明を試みた。
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