研究課題/領域番号 |
16K08022
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
三澤 尚明 宮崎大学, 産業動物防疫リサーチセンター, 教授 (20229678)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カンピロバクター / ギランバレー症候群 / 食中毒 / 分子疫学 / リポオリゴサッカライド / シアル酸 / ガングリオシド |
研究実績の概要 |
主要な食中毒の起因菌であるカンピロバクター(Campylobacter jejuni)は、急性の運動麻痺を主徴とするギランバレー症候群(GBS)の引金となることが知られている。C. jejuniに起因するGBSの発症機序は、菌体リポオリゴ糖(LOS)がシアル酸を含むガングリオシドGM1様糖鎖構造を持つことによる自己免疫疾患と考えられている。LOS合成関連遺伝子オペロンは、その構造遺伝子の配列の違いからクラスA-Fに分類されており、クラスA、B、Cに属する株がGBSのリスク因子であると報告されている。そこで平成28年度は、カンピロバクターの主要な保菌動物であり、本食中毒の重要な感染源と考えられている鶏および牛由来C. jejuni のタイピングを行い、GBS患者由来株と比較した。 ブロイラー(93株)、地鳥(76株)、市販鶏肉(119株)、牛(74株)、および県内の下痢患者由来(94株)C. jejuni 計456株を供試した。耐熱性抗原による血清型別、LOS合成関連遺伝子オペロンのタイピングを決定した。さらにクラスA-Cに分類された家畜由来菌株からLOSを抽出し、質量分析器によるシアル酸の検出とコレラ毒素Bサブユニットとの結合性を調べた。 血清型HS19型は、下痢患者由来から2株、市販鶏肉と牛から7株が分離された。LOS合成関連遺伝子オペロンのタイピングでは、ブロイラー、牛および下痢患者由来株ではクラスBが、市販鶏肉と地鶏ではクラスEが最も優勢で、クラスAの家畜由来株は9株(2.3%)と低かった。クラスA-Cに分類された家畜由来14株から抽出したLOSには、いずれもシアル酸が検出され、その中の12株はコレラ毒素Bサブユニットと結合した。以上の結果から、GBS患者由来株と共通した特徴を有する株が低頻度ではあるが、鶏および牛に分布していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究計画では、菌株の収集、血清型の決定、LOS 型の決定、MLST型の決定、cstII 遺伝子多型の検査およびシアル酸合成関連遺伝子の検出を実施する予定であった。菌株は当初の目標の半分の500株が収集されており、これらの菌株を用いて解析を進める。野生動物から菌の分離ができれば、追加で解析を行う予定である。血清型とLOD型の決定は年度内に完了した。MLST型の決定、cstII 遺伝子多型の検査およびシアル酸合成関連遺伝子の検出については、PCRとシークエンス解析を進めており、平成29年度前半には終了する予定である。一方、平成29年度以降に実施する予定であった、菌体LOS の精製とガングリオシドGM1 様エピトープの検出およびLOS からのシアル酸の検出は平成28年度に完了しており、研究計画は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
MLST型の決定、cstII 遺伝子多型の検査およびシアル酸合成関連遺伝子の検出については、PCRとシークエンス解析を進めており、平成29年度前半には終了する予定である。その後、LOS 遺伝子オペロンの次世代シークエンサーを用いた解析とGM1 エピトープを有する動物由来カンピロバクター株の動物実験における免疫応答を主眼に置いた実験を実施する予定である。
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