研究課題
食中毒菌であるカンピロバクター(Campylobacter jejuni)は、急性の運動麻痺を主徴とするギランバレー症候群(GBS)の引金となることが知られているが、そのリスク因子を保有する菌株の分布は不明な点が多い。本研究では、家畜、家禽、食品等から広く収集した菌株について、GBS発症のリスク因子を調べ、GBS発症能力を有する菌株の自然界での分布状況を明らかにした。ブロイラー(93株)、地鳥(76株)、市販鶏肉(119株)、牛(74株)、および宮崎県内の下痢患者由来(94株)由来C. jejuni 計456株を供試し、血清型、LOS合成遺伝子オペロン型、MLST型を決定した。さらに、分離株のLOSについてシアル酸及びガングリオシドGM1エピトープの発現の有無を決定した。国内のGBS患者から最も高頻度に分離されている血清型HS19型は、下痢患者由来から2株、市販鶏肉と牛から7株が分離された。LOS合成関連遺伝子オペロン型では、ブロイラー、牛および下痢患者由来株ではクラスBが、市販鶏肉と地鶏ではクラスEが最も優勢で、クラスAの家畜由来株は9株(2.3%)と低かった。クラスA-Cに分類された家畜由来14株から抽出したLOSには、いずれもシアル酸が検出され、その中の12株はコレラ毒素Bサブユニットと結合した。動物由来株のMLST解析では、18のCCタイプに分類され、CC-353 (ST-3911) が優勢だった。一方、由来に関わらず、HS19型の23株中19株(82.6%)がGBS株の約60%に認められるCC-22 (ST-22)に分類された。以上の結果から、HS19、LOSタイプA、MLSTがCC-22、LOS合成遺伝子オペロン内にシアル酸の合成と発現に必要な遺伝子セットを保有し、LOSにシアル酸を発現している株がGBSの発症リスク因子であることが示唆された。
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J. Vet. Med. Sci.
巻: 80 ページ: 49-54
10.1292/jvms.17-0534.