研究課題
近年、ヒトや牛などの繁殖能力の指標として、超音波診断装置によって確認できる卵巣内の胞状卵胞数が用いられている。胞状卵胞数は、卵巣内の原始卵胞数と相関し、原始卵胞数は受精能のある卵子の排卵および正常な発情周期を営むための性ステロイドホルモン分泌などの卵巣の潜在的能力 (卵巣予備能) と正の相関があると考えられている。そこで、固有の卵胞数の異なる乳牛について、生体での卵胞発育パターンと血中、卵胞液中ホルモン濃度変化について調べるとともに、直径1 mm以下の初期胞状卵胞から採取した発育途上卵子の発生能および顆粒層細胞のホルモンさん性能について検討を行った。その結果、胞状卵胞数の多い乳牛では、FSH分泌は少ないものの、血中・卵胞内および培養中であってもエストロジェン産生の多いことがわかり、高エストロジェン産生能が、卵子発生能を向上させていると考えられた。しかし、培養液へのFSH添加は卵子をむしろ退行させることから、FSH感受性と卵胞数の関係について今後精査する必要がある。また、発育途上にある卵子の成熟培養時に核成熟を停止させる薬剤(IBMX)を添加し、一定期間処理することで、小さな卵子の発生能が向上することが分かった。これは、IBMX処理期間中に卵子の細胞質成熟が促進されたためと考えられた。すなわち、卵巣から採取した卵子あるいは卵巣から採取する前の卵子の細胞質成熟を促進できるような培養系あるいは生体内での卵胞発育促進法を開発できれば、移植可能胚作出効率は飛躍的に向上すると考えられる。今後、体内および体外における卵子の発生能獲得機序について検討を続ける必要がある。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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