環境省のレッドリストで準絶滅危惧であるトキソウにおいて、生息域外保全のための無菌播種法の確立と遺伝的多様性の評価のためのSSRマーカーの作出を行った。トキソウでは受粉から約60日後の未熟種子を無菌播種し、4℃で4週間低温処理することで、高い発芽率が得られた。一方、トキソウ由来の66のSSRマーカーを作出し、大阪府能勢町の湿地に自生する個体群を用いて、21のSSRマーカーによる遺伝的多様性の評価を行った。個体群全体の多様性はヘテロ接合度の観察値で0.619と高かったが、多くの開花が見られた中流域の個体群は遺伝的に似た個体が多く、湿地内の区域によって遺伝的多様性が低下していることが明らかとなった。
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