申請者らはトリアジニルアンモニウム塩のトリアジニルアミン部位が優れた脱離能を有することを利用して、数種の反応・反応剤を開発している。これらはアミノ基をトリアジニルアンモニオ基へと変換し活性化することでC-N結合を切断しており、アミノ基を優れた脱離基に変換する有用な手法であると言える。しかしながらこの優れた脱離能は極性反応(ヘテロリシス)にのみ展開しており、ホモリシスへの応用は未開拓である。本課題では、トリアジニルアンモニウム塩の光励起により選択的にラジカル開裂する手法の開発を目標とする。 前年に引き続き、光レドックス触媒を用いた可視光によるラジカル反応の反応条件の検討を行った。反応は、メタクリル酸エステルへのマイケル付加反応をモデル反応に選んだ。光レドックス触媒(イリジウム型、ルテニウム型)、溶媒(塩化メチレン、メタノール、DMF、ジオキサン、DME、アセトン、アセトニトリルなど)、還元剤(アミン類)、これら反応剤の当量、反応時間(24~48時間)について種々検討を行い、最適条件を見出した結果、収率79%まで向上した。また、トリアジニルアンモニウム塩の酸化還元電位をサイクリックボルタンメトリーを用いて測定した。この結果を基に、最適の光レドックス触媒とのStern-Volmerプロットを行うことで、反応機構を推定することができた。基質検討は、種々のトリアジニルアンモニウム塩やマイケルアクセプターに対しても、反応は進行することを確認した。現在、論文作成中である。
|