研究実績の概要 |
本研究は、「ウイルスマイクロRNAは宿主細胞が発現する内因性マイクロRNAと相補的に結合し隔離することで、内因性マイクロRNAの働きの抑制して標的タンパク質を増加させ宿主細胞の形質転換を誘導する」という仮説を証明することを目的とする。具体的にはSV40ウイルスマイクロRNA miR-S1がどのような内因性のマイクロRNAと相補的に結合しどのようなタンパク質の増加を介してどのような形質転換が生み出されているのかを、その仕組みを含め明らかにすることである。これまで宿主細胞の内因性マイクロRNAとしてmiR-1266にのみ着目していたが、本年度はin slicoの解析からmiR-S1と比較的相同性が高い8種類のマイクロRNA(miR-138-5p, miR-152-3p, miR-337-5p, miR-434-5p, miR-532-3p, miR-921, miR-4261, miR-6771-5p)においてmiR-S1との結合性をin vivoで検討した。その結果、miR-S1はヒト線維芽細胞に発現するmiR-138-5pやmiR-152-3pと結合することが明らかになった。さらに興味深いことに、これらmiR-138-5pやmiR-152-3pの発現量は、コントロール線維芽細胞に比べmiR-S1をインフェクションした線維芽細胞において有意に増加していた。一方、線維芽細胞内でのmiR-1266-5pの発現量が少ないためか、miR-S1のmiR-1266-5pへの結合は見られなかった。また、細胞老化の指標となるβガラクトシダーゼ染色実験においてmiR-S1をインフェクションした線維芽細胞での老化抑制が示された。さらに、細胞周期解析においてmiR-S1をインフェクションした線維芽細胞にsubG1の割合が増加しておりアポトーシスの割合が多いことも明らかになった。
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