核内受容体CARは、様々な環境化学物質や医薬品などの生体外異物をリガンドとして、異物の代謝などで重要な役割を果たしている受容体型転写因子である。しかしながら、CARによる転写調節機構についてはほとんど検討されていない。本研究ではリガンド、コファクター、標的遺伝子の3因子により遺伝子発現の多様性が調節されていると考え、中でもCAR では詳細に検討されていないコファクターの観点より解析を行うことにした。そこで、CARによる転写活性化に重要な因子(コファクター)を明らかとするために、CAR結合タンパク質の同定を行った。その結果、いくつかのCARと複合体を形成するタンパク質候補を見出した。その中で、TRIM24とCCAR1が、免疫共沈降法による確認によりCARと複合体を形成すること、ルシフェラーゼレポーターアッセイによりCARのコアクチベーターとして作用しその転写活性能を促進することを明らかとした。興味深いことに、TRIM24のノックダウンはCARによるCYP2B6の発現誘導に大きく影響したがCYP3A4の誘導に大きな影響を与えなかった、一方でCCAR1のノックダウンはCARによるUGT1A1の発現誘導に大きく影響したが、CYP2B6の誘導には影響しなかった。加えて、CARの発現によりCCAR1はUGT1A1遺伝子エンハンサー領域(gtPBREM)へリクルートされたが、CYP2B6遺伝子エンハンサー領域(PBREM)へのリクルートは認められなかった。このことより、これらの転写共役因子は遺伝子選択的にCARによる発現誘導に関与している可能性が示唆された。以上のことより、核内受容体CARによる遺伝子発現調節は標的遺伝子(エンハンサー)により寄与するコファクターが選択されていることにより、多様な遺伝子発現調節が制御されていることを明らかにすることができた。
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