本助成を受け、昨年度末までにビタミンK2(VK2)は、健常人、透析患者共に末梢血単核細胞Peripheral Bood monomuclear Cells(PBMC)増殖抑制効果が得られた。しかしながらVK2は、サイトカイン生成能に影響を与えなかったが、透析患者の制御性T細胞に限り濃度依存的な抑制効果が確認され併せて報告することが可能となった(1)。 腎移植における免疫抑制療法は、過剰免疫抑制による日和見感染症やステロイド性の骨粗鬆症等の副作用も多い。本来VK2は、骨粗鬆症の治療に適応を持つ。そこでVK2を腎移植の免疫抑制療法に追加投与することにより、薬効評価を行う必要があると考えられた。よって最終年度の研究目標として、VK2と他の免疫抑制薬の併用を模した薬効測定方法を”コンビネーション感受性測定”として開発、実施した。VK2感受性は、健常人、透析患者共に個人差が少なく、ステロイド薬は薬効に個人差が大きい。本年度は、コンビネーション感受性測定を行うにあたりVK2の添加濃度を決定させ、薬効評価を行うことを確認した。よってVK2が腎移植の免疫抑制療法のひとつとして薬効評価できる体制を大きく進展させることが可能となった。 VK2は、PBMC増殖抑制効果を併せ持つが、作用のメカニズムは明らかに解明する必要がある。VK2はPregnane X Receptor(PXR)のリガンド活性を有していることから健常者PBMCにVK2を添加したPXRの発現量の検討を行ったところ、VK2の細胞増殖抑制作用はPXRの発現量を変化させないことを明らかにした。さらに健常者PBMCにVK2を添加することにより、NF-κB発現の検討を行った。デキサメタゾン同様にT細胞マイトゲン刺激によるp-NF-κBの発現を有意に抑制した。よって、NF-κBとそのリン酸化体を抑制することにより、薬効を発揮すると考えられた。
(1) Kusano J et al. J Clin Pharm Ther. 43(6) 895-902 2018
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