研究課題
高悪性度神経内分泌腫瘍細胞株15株の遺伝子発現データのクラスター解析 により、神経内分泌マーカーを高発現する細胞株11株と、神経内分泌マーカーの発 現の乏しい細胞株4株に分類され、かつ、神経内分泌マーカーを高発現する細胞株は 、いずれもYAP1の発現が欠失していた。非小細胞肺癌細胞株40株の中でYAP1の欠失 がみられたのは、唯一、神経内分泌マーカーを高発現するVMRC-LCDのみであり、その Xenograft tumorの免疫組織学的、電子顕微鏡的解析により、VMRC-LCDがLCNEC細胞株 であることを見出した。次に、非小細胞肺癌症例189例、小細胞癌症例41例、LCNEC症 例30例について、YAP1の染色を施行したところ、YAP1は非小細胞肺癌では3%(6/189) で陰性であるのに対し、LCNECでは60%(18/30)で陰性、小細胞癌では98%(40/41)で 陰性であった。予後解析の結果から、高悪性度神経内分泌腫瘍の中でYAP1陰性症例は 、YAP1陽性症例より化学療法に感受性を示すことが示され、YAP1陽性、陰性の小細胞 癌細胞株による薬剤感受性試験でも同様の結果が得られた。YAP1陽性の細胞株3株でY AP1遺伝子を抑制することで、神経内分泌マーカーRAB3Aの発現上昇が認められた。以 上の結果より、YAP1は肺癌の神経内分泌分化の制御に関わることが示された。さらに、Non-TRU type肺腺癌のFrozen sectionを次世代シークエンサーによって解析し、Gastrointestinal differentiationを示す群がみられ、かつ、TTF-1の不活性型変異が高頻度であることを示した。
2: おおむね順調に進展している
肺癌細胞株、肺癌切除検体を用いた解析を行い、癌におけるYAPその他のHippo pathway分子の異常と、BRG1, BRM, LSD1等のエピゲノムの異常、そして分化形質、神経内分泌分化との関係性を追及しており、その結果をまとめて、国際肺癌学会(2017)や米国癌学会(2018)などの国際学会、および、国際雑誌(Cancer Science 2016, Cancer Science 2017)において、Corresponding author, First authorとして研究内容を発表した。
肺腺癌におけるHippo pathwayに関わる接着分子の解明、さらに、Non-TRU type肺腺癌における治療ターゲットについて、検索する。
平成29年度に、数種類の細胞株で、ヒストンメチルトランスフェラーゼであるPRMT5のShRNAを行っているが、なかなかうまく行かず、このままうまくいかない場合には、Wetstern blotの実験を次年度に持ち越しとなり、かつ、次年度にトランスフェクション効率の良い細胞株をあらたに購入する可能性が出てきたため。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 11件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Pathol int
巻: Mar 30 ページ: 1-8
10.1111/pin.12666.
Int J Surg Case Rep
巻: 44 ページ: 207-211
10.1016/j.ijscr.2018.03.001.
Sci Rep
巻: 8 ページ: 2021
10.1038/s41598-018-19769-1.
巻: 41 ページ: 169-173
10.1016/j.ijscr.2017.10.017.
Plos One
巻: 12 ページ: e0181342
10.1371/journal.pone.0181342.
Cancer Sci
巻: 108 ページ: 1888-1896
10.1111/cas.13313.
Pathol Int
巻: 67 ページ: 214-221
10.1111/pin.12521.
Blood Cancer J
巻: 7 ページ: e516
10.1038/bcj.2016.122.
BMC Cancer
巻: 17 ページ: 37
10.1186/s12885-016-3020-8.
Clin J Gastroenterol
巻: 10 ページ: 32-36
10.1007/s12328-016-0691-2.
Oncogene
巻: 36 ページ: 1276-1286
10.1038/onc.2016.293.
病理と臨床
巻: 35 ページ: 152-159
http://www.jichi.ac.jp/pathol/