研究課題/領域番号 |
16K08976
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
松下 弘道 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医長 (50286481)
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研究分担者 |
安藤 潔 東海大学, 医学部, 教授 (70176014)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 急性骨髄性白血病 / RUNX3 / 遺伝子変異 / 予後不良因子 |
研究実績の概要 |
RUNX3の発現は、急性骨髄性白血病(AML)のRUNX1-RUNX1T1やCBFB-MYH11などの遺伝子異常と関連し、さらにその予後と相関することが知られている。一方、我々はこれまでにAMLの予後不良因子として知られるFLT3-ITD異常がRUNX3の発現亢進を介してAra-C耐性を惹起することを明らかにしてきた。網羅的な解析からAMLにepigeneticsに作用する数多くの新たな遺伝子異常が発見され、さらに予後との関連についても報告されている。本研究では、AMLにおけるRUNX3発現とepigeneticsに関連する遺伝子異常や予後との関連を検証し、予後予測のためのバイオマーカーとしての可能性を探るものである。 本年度は前年度に得られた計76遺伝子のexome解析の結果を詳細に行った。AML 74症例における平均遺伝子変異数は3.9個/症例であった。変異の頻度が高かった遺伝子はFLT3(ITDおよびTKDを含む)(42%)、NPM1(23%)、TET2(19%)、DNMT3A(16%)、IDH2(12%)、ASXL1(11%)、RUNX1(10%)であった。既報で変異にhotspotのある遺伝子には、同様の遺伝子変異が高頻度に同定された(FLT3 p.D835Y、NPM1 p.L287fs、DNMT3A p.R882H、IDH2 p.R140Qなど)。有意差は認めなかったが、FLT3-ITDやRUNX3変異は予後不良の傾向、CEBPA変異は予後良好の傾向であった。 RUNX3の発現に関しては、定量PCRを行いGAPDHとの比を算出した。既報にあるように、t(8;21)およびinv(16)を有するAMLでは発現が著減していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度、exome解析をおこなった遺伝子変異について詳細に行いまとめることができた。変異頻度や種類は既報とほぼ同様であり、得られたデータが妥当であることが確認された。また、RUNX3の定量PCRについてもデータを得ることができた。これらのデータを用いて臨床データとの相関を検討する素地はできた。 一方、抗がん剤耐性に関連した遺伝子の発現レベルの解析については未だ充分な準備ができていない。RUNX3遺伝子および発現制御領域の変異解析については、exome領域に変異がないことを確認した。しかし、そのほかの領域についてはデータの収集はできているものの解析は未だ手がつけられていない。これらについては次年度の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、現在得られているデータ(RUNX3の発現およびepigeneticに関連した遺伝子変異との関係)と臨床データの相関を検討することを第一の目標とする。またRUNX3遺伝子の発現制御領域の変異解析を進め、RUNX3の発現および臨床データの相関を検討する。遺伝子発現については、抗がん剤耐性に関連した遺伝子のほかruntファミリーの他の遺伝子(RUNX1、RUNX2)についても発現レベルの解析を行い、RUNX3と同様にepigeneticに関連した遺伝子変異や臨床データとの相関を検討する。特にRUNX1、RUNX2については、RUNX3の発現との関連についても検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
若干の残額が生じたが、概ね本年度に請求した助成金は使用できた。 次年度分の物品費に組み込んで使用する予定である。
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