研究課題/領域番号 |
16K09013
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
宮地 利明 金沢大学, 保健学系, 教授 (80324086)
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研究分担者 |
間瀬 光人 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (60238920)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 磁気共鳴画像(MRI) / 頭蓋内環境 / 脳 / 重力 / 物性 |
研究実績の概要 |
本研究は磁気共鳴イメージング(MRI)装置において体位を変化させて,重力代償能や変位変形度などの脳局所の新たな機能情報を非侵襲的に取得して頭蓋内環境恒常性と脳組織物性を評価する頭蓋内環境モニタリング法「グラビティMRI」を確立して臨床利用することを目的としている.平成29年度は平成28年度に引き続き脳の重力代償能や変位変形度の解析手法の研究に取り組んだ. 重力代償能の研究に関しては,研究代表者が開発した任意姿勢を保持して脳の画像を取得可能な全姿勢MRI装置を使用し,立位時と臥位時における脳血流,髄液拍動,脳の水分子拡散並びにその心周期における変化(脳内水分子揺動量)を比較した. その結果,仰臥位と比較して,座位の椎骨動脈,内頸静脈血流量及び髄液ストロークボリュームは有意に低下し,脳内水分子揺動量,椎骨及び硬膜外静脈血流量は有意に増加した.これらの立位時と座位時における変化量から重力代償能を評価可能なことが判明した. 脳の変位変形度の研究については臨床検討を開始した.仰臥位と腹臥位の各体位で脳のMRI(三次元フーリエ変換T1強調画像)を取得し,両画像から独自開発プログラムによって算出した重力による脳局所変位量は,症例数は十分でないものの特発性正常圧水頭症例と健常例では変わらない可能性が高いことが判明した.そこで次の検討として,特発性正常圧水頭症例としばしば鑑別が困難とされる無症候性脳室拡大例もしくは脳萎縮例と比較する準備を整えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究が,昨年度の実施状況報告書に記した「今後の推進方策」の通りに進めることができて,一定の成果が得られたため.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度も引き続き重力代償能や変位変形度などの脳局所の新たな機能情報を非侵襲的に取得して,頭蓋内環境恒常性と脳組織物性を評価するグラビティMRIの確立に向けて研究を進める.重力代償能の研究については,立位時と臥位時における脳内水分子揺動量の変化と髄液拍動や血流の変化との関連を解析して,体位変化時に重力によって生じる頭蓋内環境変化のメカニズムの解明と重力代償能評価法の臨床利用について検討する.また脳の変位変形度の研究については,特発性正常圧水頭症例としばしば鑑別が困難とされる無症候性脳室拡大もしくは脳萎縮例に関して検討する.以上に関して成果が得られしだい,国際学術集会で報告するとともに欧文誌への論文投稿等を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)年度末に研究代表者(金沢大学)が研究分担者の施設(名古屋市立大学)で研究課題に関する打合せ及びデータ収集を予定していたが,急用で予定日が都合つかなくなり,次年度にこの打合せ及びデータ収集を行うことにしたため.
(使用計画)当該年度助成金の中から32,717円をを次年度に移し,名古屋市立大学で研究課題に関する打合せ及びデータ収集を行うための旅費に充当する予定である.
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